はじめに「物流会社」という言葉と、「運送会社」という言葉。どちらも当たり前のように耳にする言葉ですが、意外と意識せずに使っている人も多いかもしれません。でも、あえて言います。「物流会社」と「運送会社」って、そもそも全く別物だと思います。世の中のニュースを見たり、それこそ物流・運送業界の外部の方々とお話をすると、大抵、この部分の認識のズレがあります。もう少し言ってしまうと、ここに、個人事業主がメインとなって宅配などを手掛ける軽貨物事業者の話も同じ枠組みで入ってきて、緑ナンバーの一般貨物事業者の話と混同されてしまっています。ちなみに、世の中の認識がズレていることが悪いと言いたいわけではないです。世の中からすると、それぐらい「モノを運ぶ」という業界のことを大きくとらえるのは自然なことだからです。でも、経営をしていく上では、「物流会社」と「運送会社」は別物であると、分けて考えなければ、色々と間違ってしまうと思います。物流会社と運送会社は「稼ぎ方の性格」が違うここからは、世の中的に存在している各種用語の「定義」とズレがある表現も出てくるかもしれませんが、お許しください。まず、ものごとをシンプルにするために、「物流会社」とは「倉庫を持っている会社」、そして「運送会社」とは「トラックしか持っていない会社」と定義づけてみましょう。じゃあ、倉庫1つだけ持っているトラック30台の会社は物流会社なのか?とか、倉庫もあるけどトラックも200台ある会社は運送会社じゃないのか?とか、色んな反証が出てくるのはもちろん理解しています。でも、シンプルに言ってしまうと、まずこの分け方をベースにして、「トラックしか持っていない会社で、トラックを日々動かして稼ぐのが運送会社である」というのが、一番分かりやすいと思います。そしてここから重要なのは、「倉庫の有無」という形式よりも、「トラックを日々動かして稼ぐ」という「稼ぎ方の性格」に着目すべきということです。分かりやすくするために、あえて超大手物流会社を出します。例えば、日本通運さんは、「トラックを日々動かして稼ぐ」という考え方で経営しているかというと、答えはNOだと思います。彼らは大量の倉庫を保有し、陸海空様々な輸送手段との連携や、幹線輸送を駆使して、「荷主さんのモノを適切に扱い、適切に届ける」ということに価値を発揮しています。その中には、倉庫保管から、仕分けなどの出庫作業、チャーター便や路線便の手配から、自社での配送まで、様々な手段が含まれています。これらの手段の選定やオペレーションなどの諸々を含めて「物流費」として荷主さんから費用をいただくというのが、超大手物流会社のビジネスです。じゃあ一方で、そんな複雑なことを中小の運送会社がやっているかというと、多くの会社において、答えはNOだと思います。極めてシンプルに、「4tウイング車で、ここからここまで運んで、いくら」という運賃の積み上げで「トラックを日々動かして稼ぐ」ことを生業にしていると言えると思います。物流会社はゼネコン?運送会社は職人?僕はよく「運送会社はSES(システムエンジニア派遣)で、物流会社はSIer(システム受託開発)」というたとえ話をしています。ちょっと分かりにくいかもしれないので言い換えると、「運送会社は職人で、物流会社はゼネコン」ということだと思います。「ビルを建設する」ということに対して、その中の水道工事や足場工事を1日いくらという人工で請け負うのが職人(≒運送会社)で、ビルを建設することそのものを受注するのがゼネコン(≒物流会社)ということです。荷主さんから「モノを運ぶことにかかわる全て」を受託して動くのが物流会社で、「モノを運ぶことのうち、A地点からB地点までトラックで届けること」を請け負うのが運送会社であるということです。何を回りくどく分かり切ったことを書いているんだと思う人が多いかもしれませんが、僕はこの業界で、こうした概念を踏まえて「物流(ロジスティクス)」という言葉を意識的に使っている会社とそうでない会社がいるとHPや色んな表現を見て日々感じていますし、逆に、「運送(トランスポート)」という言葉を意識的に選んでいる会社がいるということも感じています。この「意識的な使い分け」が大事だと思っています。そして、僕は意識的に「物流」という言葉を使うことを避けています。というよりも、「物流」という領域に踏み込むことを避けています。何故かというと、難しすぎるからです。そう言ってしまうと、「運送」が簡単だと言っているみたいに聞こえますが、そういうわけではありません。繰り返しますが、「物流」が難しすぎるのです。倉庫のこと、海上輸送のこと、鉄道輸送のこと、路線便のこと、あらゆることを熟知していないと、最適な提案ができないのが「物流」です。そんなものは、運送業界にかかわり始めてまだ数年の素人の僕には到底できません。トラックの運転免許すらも持っていないわけですから。「物流」と「運送」を区別することで経営はシンプルになる厳密に言うと、「物流会社」と「運送会社」をきっぱりと二分することは無理だと思います。トラックしかもっていない会社はシンプルに運送会社と言えますが、先述の通り、倉庫1つだけ持っているトラック30台の会社は物流会社なのか?という疑問のあがる会社も、例えば倉庫まるまる1つとトラック20台分はほとんど1つの荷主さんの仕事を請け負っていて出荷作業を行っているとなると、「物流会社」的な性格が強いと言えると思いますし、逆に、倉庫は賃貸でまるまる大手物流会社に貸していて、トラックはその倉庫とは関係のない仕事をチャーターで請けてやっているとなると、「運送会社」であると言えると思います。倉庫もあるけどトラックも200台ある会社も、倉庫で預かって在庫管理まで行うような「物流会社」的な側面も一部の荷主さんに対してはある一方で、スポットや定期でトラックだけの仕事を請けている「運送会社」的な側面もあるはずです。そんなことを踏まえて、六興実業は「トラック運送会社」という表現を使っています。「トラック運送会社」というのは、つまり、物流会社的な側面よりも運送会社的な側面が強い、「トラックを日々動かして稼ぐ」ことを中心としている会社のことです。物流会社は様々な要素が絡み合って複雑ですが、「トラック運送会社」は少しだけシンプルになる。シンプルだけど奥深い。そんな「トラック運送会社」の経営について、もう少し深く知りたいという方は、ぜひ、他のコラムも読んでみてください。