燃料費高騰が運送原価に与える影響「実原価」をベースにした「理想原価」に基づいて根拠ある運賃設定を行っていく過程で、どの程度の「理想原価」に設定すべきか、もっとも困るのが「燃料単価」です。燃料単価は毎週変動します。ちょうどこれを書いている頃に、ホルムズ海峡の影響を受けて燃料単価が瞬く間に大きく上がったり、その後、緊急補助金が決定してまた少し落ち着いたりと、たった数週間のあいだにも、大きく変動がありました。帝国データバンクの調査によると、燃料費が2025年比で30%上昇した場合、運輸業の場合は、営業利益は平均で約80%減少し、4社に1社が赤字へ転落するとも言われています。そうした変動リスクに備えて活用できるのが「燃料サーチャージ」という考え方です。これは国土交通省も以前より推奨しており、令和5年に燃料サーチャージの計算式等を規定する告示を出しています。実際、1日あたり200km走行する地場配送で、燃費5km/Lの4t車で想定してみると、仮に燃料単価が30円/L上昇すると、1日あたり1,200円の原価上昇になります。仮にこの4t車が、1日40,000円の売上をあげ、もともと5%の営業利益率だったとすると、2,000円の営業利益のうち、1,200円の原価上昇により60%もの利益が吹き飛んでしまうということになります。だからこそ、燃料単価の変動に備えた燃料サーチャージという考え方は、経営のリスクを抑えるためにも非常に重要になってくるというわけです。燃料サーチャージを導入の際につまずくポイント国土交通省の燃料サーチャージの計算式等を規定する告示によると、燃料サーチャージの計算式は、貸切チャーターの距離制運賃の場合「燃料サーチャージ額=走行距離(km)÷燃費(km/L)×算出上の燃料価格上昇額(円/L)」となります。計算自体は非常にシンプルですが、実は、普段からきちんと数値を把握していないと、なかなか荷主さんとの契約に取り入れることは難しいというのが現場のリアルだと思います。というのも、実際に燃料サーチャージを導入しようと思うと、「該当車両の基準となる燃費」を提示できなければなりません。複数の車種があり、車両の経年劣化やドライバーさんの乗り方などによっても違いが出るなかで、それを根拠を持ってできるようにしようと思うと、結局のところ、全車両の毎月の燃費の推移データを保有しているのが好ましいということになります。そこから必要な車両(同じ車種や同じ荷主等)の適切な期間(過去1年間等)のデータを抽出し、平均することで、ようやく根拠ある「該当車両の基準となる燃費」を提示することができます。また、「算出上の燃料価格上昇幅」とありますが、これがまた中々困ると思います。つまり、これは「もともとの運賃は燃料単価120円/Lに基づいて計算していたから、今回140円/Lに上がったならば、その差分の20円を上昇幅としてください」ということです。ここでポイントになるのは、「もともとの運賃は燃料単価120円/Lに基づいて計算していた」という部分です。一体、世の中の実際の輸送契約において、どの程度がそうした根拠を持ってそもそも運賃設定されているのでしょうか。実際のところは、この運賃表がどういう燃料単価の想定で設定されたか分からないというものがほとんどだと思います。したがって、こうした燃料サーチャージを取り入れていくにあたっても、六興実業の「トラック経営の見える化」的なアプローチで、各車両の燃費の推移をきちんと把握したり、燃料単価の推移を把握し、尚且つ、前段の「根拠ある運賃設定の仕方」の章で述べたような、実原価からの理想原価というアプローチで根拠を持って運賃設定をする(この過程には、燃料単価がいくらで、燃料費がいくらかかるのか、ということを見ていくプロセスも含まれる)ということが重要になってきます。そうすることで、「この車両の燃費の基準は、〜km/Lです」「そして、今回の運賃表は燃料単価〜円/Lに基づいて算出しています」「だから、〜円/Lから燃料単価が変動した場合については、この国土交通省が定める計算式に基づいて燃料サーチャージを設定させてください」というような対話をきちんと荷主さんと行うことができるようになります。