ビジネスはお互い様他のコラム(「根拠ある運賃」の設定方法)で「根拠ある運賃」などという偉そうなことを言ってきましたが、それでは、その「根拠」だけで荷主さんが動いてくれるのかというと、実際そうは簡単にはいかないというのも事実でしょう。僕自身、グループの実運送会社である北総運輸の経営を通して、その部分については、痛いほど身に染みています。そもそも、ビジネスというか、商取引というものは「お互い様」の関係によって成り立ちます。仕事を与えている人が偉いわけでもありません。一方で、仕事をしてあげている方が偉いというものでもありません。お互い様のパートナー関係で、成り立っているものです。もちろん、実際にはそうではなくて少し歪んだ関係性になってしまっている商取引があるのも重々分かっています。ただ、理想的な状態としては、お互い様のパートナーであるという関係がベストだと思っています。そう考えると、そもそも「運賃交渉」という言葉の表現自体が、本当は良くないのかもしれません。「交渉」なんて言ってしまうと、まるで荷主さんと敵対関係にあるかのようなニュアンスを感じてしまいます。本当は、パートナーである荷主さんと、お互い長期的に適切な関係を築いていくための、運賃に関する対話、であるべきなわけです。「数字による根拠」と「歩み寄りの工夫や努力」では、運賃交渉というのは、運賃に関するパートナーとの対話であると考えると、果たして「数字による根拠」をもって示したらそれでいいのかというと、それはそれで、パートナーとして不十分であると考えます。根拠を示した上で、お互いがよりよい関係性を続けていくために、運送会社側が取り組める努力は何なのかを示せるようにならなければならないと思います。もちろん、これだけはいただかなければ赤字を垂れ流してしまっている、とか、ドライバーさんの待遇改善や車両の入れ替えもままならないということは、しっかりと根拠を持って示すべきです。でもその上で、こちらができる工夫や努力、メリットなどを提示できる状態じゃないと、パートナーとしての対話ではなく、荷主さんからすると運送会社のわがままのように見えてしまうかもしれません。これがお互い様ということだと思います。真のパートナーになれば運賃交渉はうまくいく実際、運賃アップがうまくいっている運送会社さんにインタビューをしてみると、そこには、ただ「運ぶ」という同じように見える仕事でも、「その運送会社さんにお願いしたくなる何か」があるのだと感じます。例えば、ドライバーさんの挨拶や身だしなみ、急な依頼でもどうにかしてくれる配車力、トラックの綺麗さ、面倒くさい作業などへの対応力など、小さいことから難しいことまで、何でもいいけど、「何か」がそこには必ずあります。その「何か」があるからこそ、荷主さんと「敵対的」な関係ではなく、「お互い様」の「パートナー」の関係を築くことができている。だから、運賃に関する対話もうまくいく。精神論なのかもしれませんが、数字の根拠という部分についてこれまで長々と言及してきたからこそ、この大切なハートの部分をきちんと書いておきたいと思って、少し差し出がましくも書いてみました。論語と算盤。右脳と左脳。理論と感性。どちらも揃うから魅力的なのは、人間も会社も同じだと思います。ちなみに、精神論ではなく、理論からアプローチできる運送会社としての工夫や努力、荷主さんへのメリット提示もあると思います。それが「稼働率」という考え方です。この「稼働率」をここまで述べてきた「原価」とセットで見える化することで、運送会社の強力な武器となります。この「稼働率」ということについては、また別のコラムで考えてみたいと思います。