はじめに「原価」の話が、数字の根拠を示すための「守り」の話だとすれば、「稼働率」の話は、その中で運送会社の各社の工夫によって経営的効率を引き上げたり、あるいは荷主さんへの独自の価値を生み出すための「攻め」の武器となると考えています。「実原価」から「理想原価」を決め、その「1日あたり固定費」と「1kmあたり変動費」を元に運賃を設定していくという手順を踏むと、実際には「運送原価=1日あたり固定費×固定費係数+1kmあたり変動費×走行距離」という計算で算出された「運送原価」に、適正な利益を上乗せすることで運賃を設定するという流れになります。このうち「走行距離」という部分については、「根拠ある運賃の設定の仕方」の章でも言及した通り、どの片道なのか往復なのか、さらには車庫から積地までの距離を含めるのかどうかといった観点で、どこまでを含めて考えるのかで運送原価が大きく変わります。固定費の部分をどう見るかで運賃は大きく変わるさらに運送原価に大きく影響するのが、上記の計算式のうちの「固定費係数」という部分です。この部分を「半日=固定費係数は0.5」でみるのか、あるいは「1日=固定費係数は1」でみるのかといった違いで、運送原価は大きく変わってきます。実際に、1日あたりの固定費に含まれるものとしては、人件費と車両費用が大半を占めますが、どれだけ少なく見積もっても、今の時代、1日あたり固定費は2万円は必ず超えてきます。そう考えると、固定費係数を1とみるか0.5とみるかで1万円以上、運送原価に差が出てくるということになります。つまり、簡単に言ってしまうと、利益を確保できる運賃も1万円以上の差が出るということです。この考え方の延長線上に、いわゆる長距離の帰り荷運賃があります。帰り荷運賃を例にあげてしまうと上がらない運賃の温床のような印象で、いいイメージを持たないかもしれませんが、そういう安易な値下げを推奨したいわけでは決してありません。ただ、この固定費係数の部分を意識して、例えば地場配送の会社さんでも、納品時間が比較的自由な案件と午前中指定の案件を組み合わせることで、午前中の案件が早く卸し終わった車両はもう1本、その納品時間が自由な案件をやることで稼働を高めていくということで、荷主さんにもメリットがある運賃の設計かつ、自社の収益性も高められるような配車ができるようになります。色々な運送会社さんにインタビューをしていると、強い運送会社の裏には、このような工夫が潜んでいることをよく感じます。安易な値下げをするべきではないですが、工夫による荷主さんへのメリット創出と自社の収益性向上には取り組むべきであると考えます。これこそまさに「稼働率は武器」と書いた所以です。稼働率の項目例実際にこの「稼働率」を把握して経営に活かしていこうと思うと、「稼働率」と一口に言っても、パッと思いつくだけで、例えば以下のように様々な項目があげられます。【日あたり売上効率】月間の売上/稼働日数月間の売上/その月のカレンダー日数月間の売上/営業日数【時間あたり売上効率】月間の売上/24時間×その月のカレンダー日数月間の売上/24時間×営業日数月間の売上/月間の拘束時間の上限月間の売上/その月の拘束時間合計月間の売上/その月の走行時間合計【距離あたり売上効率】月間の売上/月間の総走行距離【稼働日数効率】稼働日数/その月のカレンダー日数稼働日数/営業日数【拘束時間効率】稼働した日の平均拘束時間/24時間その月の拘束時間合計/24時間×その月のカレンダー日数その月の拘束時間合計/24時間×営業日数その月の拘束時間の合計/月間の拘束時間の上限【走行時間効率】稼働した日の平均走行時間/24時間その月の走行時間合計/24時間×その月のカレンダー日数その月の走行時間合計/24時間×営業日数(その会社ごとの設定値)その月の走行時間合計/その月の拘束時間合計その月の走行時間合計/月間の拘束時間の上限【実車効率】その月の総実車距離/その月の総走行距離その月の実車時間合計/その月の拘束時間合計その月の実車時間合計/月間の拘束時間の上限【荷待ち時間効率】荷待ち時間の月間合計稼働した日の荷待ち時間の平均荷待ち時間/拘束時間【積載効率】トン数で見たパターンの積載率カゴ台車やパレットやケースの個数ベースでの積載率容積で見たパターンの積載率など…もちろん、これら全てを見れるようにすべきだというわけではありません。この中で自社が経営に活用したい「稼働率」に関する指標を把握できるようにすべきです。あるいは、もしかすると、この中にはない指標もあるかもしれません。それが「その会社の経営を適切に管理し、意思決定に活用し、収益向上等の目的に繋げていくにあたって、どのように数字を見ていくのが最適なのか?」という「管理会計」なわけです。六興実業の「トラック経営の見える化」では、この「稼働率」に関する見える化も追求していきたいと考えています。稼働率の見える化はドライバーがキーマンそして、この「稼働率」の見える化を追求していきたいと考えてみると、実は、ドライバーさんの協力が不可欠であるということに気が付きます。例えば、上記で挙げた項目のうち、「荷待ち時間」や「実車時間」を計測しようと思うと、ドライバーさんに正しくデジタコ等を活用して入力してもらう必要が出てきます。「拘束時間」や「走行時間」に関する部分は、デジタコに正しく入力しなくても、ある意味自動的に決定します。なぜならば、エンジンが動いているとか、走行しているということについては、機械的に判定できるからです。でも「荷待ちをしている」や「荷物を積んで走っている(実車)」ということについては、実は機械的には判定できないので、ドライバーさんが正しく入力する必要が出てきます。積載効率を正しく取るのも本当は難しいまた、上記の例にあげた中で「積載効率」の部分については、もっと難しくなると考えます。よく積載率という言葉は耳にしますが、そもそもトラックの積載率は、実際どの程度、リアルに把握できているでしょうか。なかなか難しいというのが実情なのではないかと思います。伝票ベースでトン数や個数などが把握できる案件もあるとは思いますが、そういう案件が全てではありません。あと、荷物によって、トンや個、何パレット、カゴ台車何個など、それ以外にも様々、管理する単位が違ってくると思います。そういうものを混載するとなると、一体荷台にどの程度のスペースが空いているのかということを正しく把握するのは難しいのではないでしょうか。そうなると、実際にトラックの荷台の様子をリアルに確認をできるのは、ドライバーさんだけになります。これを経営に活用できる参考情報としてドライバーさんから報告してもらうような仕組みを作っていくことも、これからの運送会社経営においては必要になってくると思います。実は、「目視ベースでこれぐらい荷台が埋まっている」という感覚的な容積率による積載率こそが、経営判断に使える「積載効率」の情報だ、というようなコロンブスの卵的な発想もあり得ると思っています。このような見えない現場の実態を捉えた生の情報こそ、「稼働率」を武器として経営に活用できるようになる情報なのではないでしょうか。六興実業の「トラック経営の見える化」は、これからこの「稼働率」という部分にもチャレンジしていく予定です。少し難しいチャレンジですが、共に考え、荷主さんにとっても、運送会社さんにとっても豊かさをもたらすことができるような世界をつくっていきましょう。この「稼働率」をうまく活用することで、人手不足の中でも輸送できる量を増やすことができたり、CO2の排出効率をよくしたりできるなど、ひいては社会のためにもつながる取り組みになっていきます。運送会社の収益性も向上し、ドライバーさんの給与が増えることにもつながっていく取り組みになるかもしれません。「六方よし」経営の実現を目指し、トラック運送会社の経営を共にアップデートしていきましょう。