はじめに来たる2027年春頃には、適正原価が告示されます。そして、2028年6月までには、その適正原価の遵守義務が施行されることとなります。加えて、そのタイミングで許可更新制度もスタートを切ります。今このコラムを書いているのは2026年8月ですが、すなわち、今から約1年後には「適正原価はこのようなルールになりますよ。適正原価は具体的にこんな数字になりますよ。」ということが発表され、それからさらに1年後、今から2年後には、それがもう運送会社の義務として運用に乗せられるということです。つまりこういうことです。2027年の春には、各運送会社は荷主さんをまわりながら、こんな話をしていく必要があります。「実は、ちょうどこの春に、適正原価がこんな感じで決まりました。少しの猶予を持って、今から約1年後には、このルールが適用されるようになります。このルールに照らし合わせると、現状の運賃と、〜〜だけ乖離があります。この適正原価は、これまでの標準運賃と違って、義務になるので、お互いちゃんと守らないといけないのです。なので、今年から段階的に、そこに向けて運賃を引き上げていくことはできないでしょうか?」かなり骨が折れる作業ではありますが、この新たな運送業界のルールに適応していくことこそ、これからの時代、重要になってくることです。大前提として、こうした新たなルールは、運送会社を苦しめたくてスタートするわけではありません。むしろ、この業界で働く人、真面目に経営をする事業者を、より豊かにしていくためのルールなのです。この新しいルールを正しく理解して、前向きに受け止め、適応し、そして共に豊かになっていきましょう。トラック適正化二法について適正原価や許可更新制などをはじめとする、この一連の法改正は「トラック適正化二法」と呼ばれています。この「トラック適正化二法」は、2025年6月11日に公布された「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律(令和7年法律第60号)」、「貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法律(令和7年法律第61号)」という2つの法律の総称です。さて、この「トラック適正化二法」には、どんな法改正が含まれるのでしょうか?整理すると、主に以下の4つがポイントになります。(その他にも、貨物利用運送事業者への書面交付義務等の適用などもありますが、実運送という観点では、以下の4つが重要なポイントになると思います。)【トラック適正化二法による主な改正内容】①元請を0次請けとして2次請けまでに多重下請けを制限(努力義務)②白トラ対策の強化(荷主への罰則規定も含む)③運送事業許可に5年ごとの更新制の導入④国土交通大臣が定める適正原価を継続的に下回らない運賃の義務この中の①②については、2026年4月に既に施行されています。③④については「公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日」までに施行されるということなので、つまり、「はじめに」にも書いた通り、2028年6月まで(正確に言うと、2028年6月10日まで)には施行されるということです。これらはいずれも、この運送業界における大きなルールブックの書き換えなので、正しく理解をしておく必要があります。このルールブックの書き換えが具体的にどのようなもので、そしてどのようにこの変化を受け止めればいいのか、ということについては、改めて後段で解説していきたいと思います。トラック適正化二法は誰のためところで、国土交通省のHPの中の「トラック適正化二法」に関するページの冒頭には、以下のように書かれています。「トラック適正化二法は、トラックドライバーの経済的社会的地位の向上等により、我が国の物流の持続可能性の確保及び国民経済の健全な発展を図る観点から、トラックドライバーの適切な賃金の確保とトラック運送業界の質の向上等を目的として、第217回通常国会において議員立法により成立したものです。」そうです。「はじめに」でも書いた通り、やはりこれは、「トラックドライバーの経済的社会的地位向上」など、この業界の豊かさの実現を目指した一連の法律なのです。ちなみに元の法案の条文には、このように書かれています。貨物自動車運送事業者及び貨物利用運送事業者は、その労働者が有する知識、技能等についての公正な評価に基づく適正な賃金の支払等の適切な処遇を確保するために必要な措置を実施する。僕個人的には、わざわざこの条文を盛り込んだことこそが、このトラック新法の「画竜点睛」であると思い、「ドライバーさんの地位向上」に向けた明確な意思表示であると受け取りました。論理的に考えると、別にこの条文はなくとも、「適切な運送会社が、適切に運賃を収受して、適切に事業を継続できるようにして、持続可能な物流インフラを構築する」という大義は成立するはずなんです。でも、そこからさらに踏み込んで「適切に運賃を収受して、物流インフラを支えるドライバーさんに適切に還元する」というところまで腹をくくって明文化した。これは結構すごいことだと思います。国や、この法案の成立に向けて尽力された運送物流業界の先輩方の本気を感じます。「ちゃんともらえるようにしようね」はこの業界の経営者みんなが両手を広げて望むことですが、「ちゃんともらって、ちゃんと配ろうね」とまで規定するというところに、本当に大事な部分が詰まっていると感じました。「運送業許可に5年ごとの更新制の導入」というセンセーショナルな許可更新性の部分がよく注目されていますが、それは「小規模事業者の排除」などという後ろ向きな文脈では決してなく、「運送業界で働くドライバーさんのために」本気で考え抜いたからこそ生まれた、痛みを伴う前向きな大きな一歩なのだと思います。我々がやるべきことの答えはシンプルです。持続可能な運送会社経営、そしてドライバーさんの待遇改善に向けて、できることを一歩ずつやっていく。まずは自社の運送原価の「見える化」から。そうして、ドライバーさんにきちんと還元できる未来をつくっていく。そのためにも、他のコラムでは、適正原価のルールがどのようになっていくのか?ということを一緒に理解し、どのように適応していくべきか、共に考えていきましょう。