適正原価は義務であるそもそも論になりますが、とても重要な観点が1つあります。それは、適正原価は「義務」であるということです。しかも、その「義務」というのは、「トラック事業者の受注者としての義務(つまり、実際に運行する実運送会社としての義務)」だけでなく、「トラック事業者の発注者としての義務(つまり、協力会社に仕事を依頼する元請けとしての義務)」でもあるということです。標準的運賃はあくまで「参考」の運賃でしたが、適正原価は、実運送会社側にも、そして元請け側にも「義務」として課されるということになるわけです。じゃあ一体、「その義務を破った場合の罰則はどうなるのか?」とか、「どうやって義務を守っているかどうかチェックするんだ?」といった疑問が湧いてくるのも理解できますが、とにかく、適正原価は「参考」ではなく「義務」であるというのが重要なポイントです。ちなみに、現段階(2026年7月17日に実施された第1回適正原価の設定に向けた有識者検討会)では、「一定期間において運賃及び料金が適正原価を下回る状態が継続的に認められる場合には違法となる」という考え方が示されています。これはつまり、少なくとも「1回ずつの運行で適正原価を下回っているかどうかをチェックするわけではない」ということなのだと思います。実際のルール運用をどのようにしていくのかはこれから決まっていくことではありますが、少なくとも現在地を理解しておくことは大事なので、念の為、書いておきます。「引き算」から「足し算」の考え方へさて、そんな中で、先日、とても勉強になる本を読んだので、ここで引用させていただきます。物流ジャーナリストの森田富士夫さんという方が書いている「トラック運送業界の大転換」という本です。今回の法改正の流れなども、かなり分かりやすく整理されており、かつ、今後の運送会社に必要な観点が示されています。▼森田富士夫氏「トラック運送業界の大転換」https://amzn.asia/d/03bVHQgLその森田富士夫さんの「トラック運送業界の大転換」という本の中で、これからの運送業界の協力会社間の取引は、「引き算」ではなく「足し算」になるという観点が示されていました。つまり、図にするとこういうことです。今までは、50,000円で元請けの物流会社が受けた仕事から手数料が「引き算」されていって仕事が渡り、実際に運行する二次請けの運送会社は40,000円(実は、適正原価を割ってしまっている…)で走っていました。でも、これからは42,000円という適正原価が示されることになるので、そこから「足し算」で運賃が決まっていくということになります。42,000円の適正原価に対して、5,000円の適正利益を「足し算」して、実際に運行する二次請けの運送会社は47,000円で走る。そこに手数料を「足し算」していくことで、元請けの物流会社は57,000円で仕事を受けなければならない。でなければ、適正原価という「義務」を守ることができない。「トラック事業者の受注者としての義務(つまり、実際に運行する実運送会社としての義務)」だけでなく、「トラック事業者の発注者としての義務(つまり、協力会社に仕事を依頼する元請けとしての義務)」でもあるからこそ、そうなっていきます。「引き算」から「足し算」への転換。なるほど。分かりやすい。他の部分についても、とっても分かりやすく色々解説されてますので、気になる方は是非、森田富士夫さんの「トラック運送業界の大転換」を手に取って読んでみてください。これからの時代において、運送会社経営にかかわる人には必携の書だと思います。