これからの時代に必要なことこのコラムでは、「許可更新制への移行」「適正原価の導入」といった背景の中で、これからの時代、運送会社には何が必要になってくるのかということについて、整理していきたいと思います。ちなみに、「許可更新制への移行」「適正原価の導入」といった「トラック適正化二法」への対応だけでも大変ですが、運送業界の周辺では、さらに「未払い残業」といったトピックや、主にどちらかと言うと荷主向けではあるものの、巡り巡って運送会社側の対応も必要になってくる「物流効率化法の改正」といったトピックもあります。結論から言います。これからの時代の運送会社には「5つの管理」がより重要になってきます。ちなみに先に言っておきますが、拍子抜けするぐらいに当たり前のことをこれから書きます。これからの時代の運送会社に必要な5つの管理は、「原価管理」「労務管理」「安全管理」「運行管理」「稼働率管理」の5つです。どうでしょうか。目新しさの全くない言葉の並びです。あえて少しだけ特徴的なものをあげるならば「稼働率管理」くらいでしょうか。でも、別にこれも珍しいものではありません。原価管理・労務管理についてまず「原価管理」について。これは、これまで別のコラム(「適正原価の肝は「変動費」と「固定費」)でも述べましたが、適正原価に対応していくためには、「自社の原価」もあわせてしっかりと説明できるようになっていかなければなりません。そのためには「原価管理」が必須です。次に「労務管理」について。2020年4月の法改正により、未払い残業代の請求期間が2年から3年となりました。3年というのも暫定措置であり、時期は未定ですが、将来的には5年になる予定です。運送会社でよく見られる歩合給と残業代を相殺するような賃金制度に関しては、2023年3月に最高裁で割増賃金の支払とは認められない判決が出ました。また、適正原価が「1時間あたり固定費」をベースに計算されるものとなると、実際どのような稼働時間になっているのかという管理体制も必要になってきます。安全管理・運行管理について「安全管理」や「運行管理」についてはこうです。恐らくこれから、「許可更新制への移行」の中で、運送業界ではGマークの重要性が増すと言われています。根拠としては、先に許可更新制への移行を済ましている貸切バス業界です。貸切バス業界のGマークに相当するのが「セーフティバス」制度なのですが、一ツ星以上のセーフティバス認定を受けている事業者は、許可更新時に法人代表者などに課される「法令試験」が延長対象となるメリットがあります。この「法令試験」は正答率90%以上が求められ、再試験は一度きりという、難易度が高く、許可更新ができないというリスクにもなるものです。したがって、「セーフティバス」を取得することは、貸切バス業界においては、許可更新のためにも重要な1つのテーマになっています。運送業界でも同様の許可更新制が踏襲されるとすると、「Gマーク」を取得しておいた方がいいという流れになると予想されます。許可更新にあたって必要になってくるであろう書類なども、結局のところは巡回指導や監査で見られる項目を日常的に遵守していくためにあるものだと考えると、しっかりと普段から「安全管理」や「運行管理」を行っておくことが求められます。また、前のコラム(適正原価の方針から読み取れるメッセージ)の中でも触れましたが、適正原価の原価項目の中に「安全や教育に関する投資費用」も含められる方向性です。国土交通省としても、その重要性を認識しているわけです。やはり、運送会社にとって重要な経営テーマの1つは間違いなく「安全」です。そういう意味では、ある意味当たり前ではありますが、これからますますこの部分の取り組みの重要性が増してくると想像できます。稼働率管理について最後に「稼働率管理」について。これは既に、一部の運送会社や物流会社は実感している部分もあるかもしれませんが、「物流効率化法」などの改正(2026年4月から特定荷主に対しては法的義務として全面的に施行)により、とりわけ特定荷主にカテゴライズされる大手の荷主は、物流の効率化が「義務」として課されるようになりました。そうでない荷主も「努力義務」として取り組んでいかなければなりません。その中で、特定荷主は「荷待ち時間・荷役作業時間の短縮」「積載効率の向上」というテーマに関して、中長期的な計画を作成する義務があります。そうなってくると、荷主側の目線でも「時間の効率」や「積載の効率」に関しての実態を把握する必要が出てきます。そこで、直近、荷主側から(あるいは元請けの物流会社側から)「時間」や「積載率」などに関しての報告をこれまで以上に細かく求められるようになった運送会社も少なくないのではないでしょうか。また、荷主側の目線だけでなく、運送会社の経営にとっても、適正原価に適応していくためには、「時間効率」と「積載効率」を見える化していくことが重要になってきます。別の2つのコラム(適正原価によって生じる転換点)(適正原価と「実車率」の考え方)の中でも繰り返し述べましたが、「1時間あたり固定費」で適正原価を算出するということになると、これまでは「ドライバー付き派遣業」としてやってきていた運送会社も、「時間貸し・スペース貸し不動産業」のモデルへと転換していかなければいけないという流れになっていきます。「時間貸し・スペース貸し不動産業」を営んでいくには、当然のことながら「時間効率」と「積載効率」を把握することは必須になってきます。「どの荷主の案件の、どの部分に、時間の無駄があるのか?」「どの時間を有効活用して案件を組み合わせられるのか?」「どのスペースに積み合わせができるのか?」こういったことを「見える化」して、能動的にそこを効率化していく取り組みこそ、これからの運送会社にとって必要になってきます。「稼働率管理」の鍵はドライバーさんにある?さて、いかがでしたでしょうか。読む人によっては、いずれも目新しさはない当たり前のことだったかもしれません。やっている運送会社は既にやっている。「原価管理」「労務管理」「安全管理」「運行管理」「稼働率管理」という当たり前のことを、バカにしないで、ちゃんとやる。それがこれからの時代の運送会社に必要なコトなのではないでしょうか。目先の情報に流されて右往左往するのではなく、しっかりと本質を見据えてやっていきたいです。これからどうなっていくのかという不安はありますが、あくまで、今回の「トラック適正化二法」は、この業界を前向きに進めていくための仕掛けなのです。そして、その目的は、そこにかかわる人、そこで働く人を豊かにしていくためなのです。そのメッセージをしっかりと受け取り、こちらも前向きにアップデートしていかなければならない。本当にそう思います。ちなみに、ちょっと余談になりますが、これからの時代は「ドライバーさんが持っている情報」をデータ化する仕組みの重要性が高まってくると思っています。例えば、「荷台のスペースがどれぐらい空いているのか?」という情報は、伝票だけではなかなか読み取れません。現場で積込や荷卸をするドライバーさんにしか分からない部分もあります。車庫の事務所からは、トラックを送り出すときの姿と、帰ってきたときの姿しか見えないのです。また、「何が理由で、どこでどれだけ待っているのか?」「どの作業にどれだけの時間がかかっているのか?」といった情報も、実は、ドライバーさんが現場の状況を細かく教えてくれることで把握できるものです。もちろん、その情報は「日報」として記されるものではありますが、これからはその内容を「紙」ではなく「データ」として取り扱い、改善に繋げていくことが必要になってくると思います。「時間効率」や「積載効率」の把握の鍵は、ドライバーさんにあるのではないでしょうか。