「原価計算」は何のために行うのか?このコラムでは、そもそもその中でも「原価計算」って、どこからどのように手を付けていけばいいのだろうか?という核心に迫っていきたいと思います。まず、大前提からお伝えしておくと、「原価計算」というものには、かくあるべきだという「正解」はありません。これは決して、保身のために言っているわけではありません。遡ること、かの有名な「トヨタ生産方式」という経営手法や、京セラの稲盛和夫氏が掲げた「アメーバ経営」という経営手法なども、全ては「原価計算」(正確に言うと、原価企画)がその経営手法の根幹にあります。そして、それはトヨタ生産方式の場合はトヨタ流ですし、アメーバ経営の場合は京セラ流の手法であり、全てがそのまま、あらゆる会社に当てはまるというわけではありません。これらの有名な経営手法の本質は、その会社の経営を適切に管理し、意思決定に活用し、収益向上等の目的に繋げていくにあたって、どのように数字を見ていくのが最適なのか?ということのあくなき追求の結果であるということなのです。いわゆるこれが「管理会計」なのです。繰り返しますが、「管理会計」というものは、あくまで「その会社の経営を適切に管理し、意思決定に活用し、収益向上等の目的に繋げていくにあたって、どのように数字を見ていくのが最適なのか?」ということなので、つまり、各社ごとに正解があるということになります。なので、どこまで細かく原価管理を行うか?どのような項目を見るか?どのような数字の処理の仕方をするか?といった部分は、「その会社の経営を適切に管理し、意思決定に活用し、収益向上等の目的に繋げていく」という目的が達成されていれば、それがその会社にとってベストであるわけです。余談ですが、以前お邪魔した運送会社さんでは、他社では見たことがないレベルの、そして六興実業が提唱する「トラック経営の見える化」よりも、かなり高度な原価計算を行っていました。車両ごとの収支管理はもちろん行っているのですが、そこに加えてさらに、減価償却費や借入返済や法人税等を加味して、車両ごとの想定キャッシュフロー管理まで行っていたのです。このやり方は「キャッシュフローまで見て、その先の事業拡大に向けた投資や足元の経営の安全性等の判断に活用したい」という目的を達成するために、その会社にとってベストな手法を追求した結果なわけです。原価集計方法の正解は1つではないまた、実は、六興実業が提唱している「トラック経営の見える化」の中での原価計算における集計方法と、国土交通省が提示する「標準的運賃」における原価の集計方法は、実は少し違う部分があります。あるいは、これから出来上がってくるであろう「適正原価」における集計方法も、恐らく違う集計方法になります。でも、これはどちらが良いとかどちらが悪いという話ではなく、どこまでの手間で、どのような経営的効果を得るかというバランスの中での違いなわけです。具体的に言うと、例えば、「標準的運賃」においては、借入金の利息まで加味した原価集計を行っていますが、六興実業の「トラック経営の見える化」においては、そこまでの集計を行っていません。これは、原価への金額的影響が少ないことと、集計の手間を加味してそうしています。また、「標準的運賃」においては、オイル費、タイヤ費、尿素水費、といった変動費の要素を集計するにあたって、オイル交換走行距離、タイヤ交換走行距離(加えてタイヤ交換の工賃やタイヤチューブ1本あたりの費用など)、尿素水1Lあたり走行距離といった観点を用いて集計しています。恐らく「適正原価」においてもそのような観点を用いて原価計算が行われるでしょう。ただ、記憶に新しい「適正原価調査票」への回答などで、この部分の回答に苦戦した運送会社さんは多かったのではないでしょうか。僕が六興実業の創業前、2022年11月から坂東市の運送会社にかかわることになった際、相場からなる運賃に違和感を抱き、自社の原価計算をしてみようと思ったときに、どこから手をつけたらいいのか分からなかったので「運送会社 原価計算」などとインターネットで検索をして、国土交通省が発行している「原価計算の活用に向けて」というリーフレットに辿り着きました。そのリーフレットに書いてあった原価計算の手法をそのまま自社に当てはめてやろうとしたときに、まさにこのオイル交換走行距離、タイヤ交換走行距離、尿素水1Lあたり走行距離といった部分でつまづきました。僕はトラックに詳しくないので、オイル交換走行距離も、タイヤ交換走行距離も、尿素水1Lあたり走行距離も、正直全くピンと来なかったわけです。なので、一旦諦めて、車両ごとに「各月に実際にかかった」費用、つまりオイルの費用総額、タイヤの費用総額、尿素水の費用総額などから原価を集計することにしました。六興実業の「トラック経営の見える化」においても、その集計方法を採用しています。もちろん、それによって生じてしまう原価計算上のデメリットも理解しています。例えば、タイヤ交換は毎月行うわけではないので、タイヤ交換を行った月に突発的に高い費用が計上されてしまうことになってしまいます。ただし、これは1年間、2年間と一定期間の各種費用を集計して(そして今後も毎月集計し続けて)、一定期間で平均して原価を見るということによって、1kmあたりの変動費などの原価分析を行う際には、ある程度正しく解決することができます。ちなみに、単月の車両ごとの収支を見る際にも、発生した費用をそのまま計上してしまうと、タイヤ交換を行った月は赤字に見えてしまうといった影響があるのですが、それについては「費用をならして見る」という独自の管理会計的処理で解決を試みています。この「ならして見る」については、改めて別のコラムで書きたいと思います。