はじめにそもそも原価計算はどのように行っていけばいいのでしょうか。ここでは、原価計算の集計項目のイメージを共有するために、あくまで「もっとも簡易的な手順」をまず解説したいと思います。実際には、ドライバーさんが1つの車両に専属ではなく、車両の乗り換えが頻繁に発生する場合や、運行の形態が複雑な場合などは、この簡易的な手順では対応できない場合もあると思います。ちなみに、「荷主ごとの原価計算をして荷主別収支を見たい」というような考えをお持ちの方もいるかもしれませんが、焦らないでください。いきなりその数字を出すことはできません。「ドライバー別収支」も同様です。何故ならば、売上は荷主ごとやドライバーごとに集計することができても、燃料代や修理代、車両代といった「原価」は基本的には「トラック」にしか紐づけることができないからです。なので、原価計算は「車両別」に行うことからスタートします。じゃあ、荷主別の収支は見れないのか?と思われるかもしれませんが、それはそんなことはありません。後ほどこの部分についても解説したいと思いますが、荷主別収支を見るためにも、まずは「車両別の原価計算」からスタートする必要があるのです。車両別の原価計算の進め方それでは「車両別の原価計算」の簡易的な手順について見ていきましょう。本当はエクセルを用意しているのですが、文章だとイメージがつきにくい部分もあるかもしれませんが、そこはご了承ください…。【STEP1】車両一覧とメインドライバーの紐づけ手順1:まずは、車両の一覧をつくりましょう・車番(必須)・車種(積載や形状や装備など必要に応じて書いておくと分かりやすい)※トレーラーの場合は、メインの組み合わせのヘッドとシャーシをセットにしましょう手順2:車両に「メインドライバー」を紐づけていきましょう※予備車には「予備車」と入れておくと分かりやすいです※頻繁にドライバーの乗り換えが発生する場合は難しくなります…【STEP2】車両費用について手順1:それぞれの車両がリース契約か購入かを調べましょう手順2:月々の支払額(償却額)を入力しましょう⇒ リースの場合:リース契約書を見る⇒ 購入の場合:購入契約書か固定資産台帳を見る※固定資産台帳の見方:固定資産台帳の中で「当期償却費合計」などと記載がある部分が、その1年間での償却額合計なので、12ヶ月で割ると1ヶ月分の償却額となります以下は、「当該月」のデータをそれぞれ月毎に入力していくイメージになります。【STEP3】車両ごとにかかる固定費手順1:車両ごとにかかっている「法定諸費用」や「任意保険」を入力しましょう・法定諸費用(自動車税、自動車重量税、自賠責保険)・任意保険(車両保険、貨物保険など)※法定諸費用は、年間払いなどになっていると思うので、12ヶ月で割り算をしてから入力しましょう※会社ごとに支払っている車両保険などは、車両台数で割り算をしてから入力しましょう手順2:車両ごとの「駐車場代」や「その他固定費」を入力しましょう・駐車場代・その他固定費(よくあるのは、デジタコ通信費、携帯代など)※駐車場代も、そこに駐車している車両で割って1台あたりの金額にしましょう※その他固定費は、ドライバーさんに付与していたり車両ごとになにか取り付けているものが対象です【STEP4】車両ごとの運行にかかわる経費手順1:車両ごとにかかっている「メンテナンス費」を入力していきましょうメンテナンス費用に含まれる代表的なものは以下・3ヶ月点検 ・12ヶ月点検(車検) ・タイヤ・アドブルーやオイル ・一般修理 ・部品購入※アドブルーやオイルは少額で、かつその他の請求書(燃料や修理点検)などに紛れていることが多いので、目をつぶるのもナシではないです手順2:車両ごとにかかっている「燃料費」を入力していきましょう※燃料費を入力する際に、給油量も取りまとめておくと燃費計算に活用できます手順3:車両ごとにかかっている「高速代」を入力していきましょう【STEP5】車両に紐づく人件費手順1:その車両に乗っているメインドライバーへの「総支給額」を入力していきましょう※乗換が頻繁な場合は難しくなりますので、応相談※最初は、多少の乗換(土日に別のドライバーが乗るなど)は目をつぶった方がシンプルになります手順2:会社負担分の「社会保険」を入力していきましょう※支給控除一覧表などを見るとわかりやすいです※労働保険の部分で多少の差異はありますが、社会保険は会社と従業員で折半なので、「給与明細(支給控除一覧表)の社会保険料控除額」=「会社負担分の社会保険」となります【STEP6】車両ごとの売上手順1:車両ごとの「売上」および「収受高速料金」を入力しましょう手順2:その他に、荷役代などを収受している場合は「その他売上」に入力しましょう【STEP7】車両ごとの販管費手順1:車両ごとの「販管費」を入力しましょう※販管費には、管理者や役員、事務員さんの給料や、事務所経費などが含まれます※毎月かかっている販管費を厳密に計算していくと手間がかかりすぎるので、決算書などの販管費データを参考に、車両1台あたり月いくらとするか設定してしまうのがベターです以上、ここまでのSTEP1~7を全て入力することができれば、「当該月」の車両ごとの原価計算が完了し、「利益」並びに「利益率」といった「車両別収支」を算出することができます。原価計算は「継続」することで活用できる実は、ここまで長々と手順を書いてきましたが、「当該月」と書いているのが実はポイントで、このデータの集計を例えば2026年の3月分について行えば、2026年3月分の原価計算ができたことになります。ただし、その1ヶ月分の原価計算データで使い物になるかというと、実際にはなりません。理由としては、前述のようにタイヤや修繕費は月によって大きく変動するということもあり、それ以外の売上や人件費などの費用の要素においても、月による変動が生じるものがあるからです。また、例えば3t車というくくりなどで分析したときには、自社の3t車の中にも、減価償却が終わっているものから直近で購入したばかりのものまで幅広くあり、車両費用のかかり方やメンテナンス費用のかかり方に大きく違いがでたりします。したがって、使い物になる原価計算データとするには、「一定期間」(少なくとも半年から1年分程度。理想は、費用の大きな車検を含む1年間以上)の「複数車両」の集計を行う必要があると考えます。変動費と固定費の算出こそが重要さて、ここまでで、「車両別収支」を見ることができるようになりましたが、これで満足してはいけません。実は「原価計算」の本丸はこの先にあります。実際に運賃の見積もりや運賃交渉に使うデータとなると、「車両別収支」だけでは不十分です。それでは、その当該月にその車両が儲かったかどうかということしか判別できません。「標準的運賃に関する解説書」や、国土交通省の発行している「原価計算の手引き」などでも、その先の部分についての重要性が書かれています。それが、「1kmあたりの変動費」と「1時間あたりの固定費」です。この「1kmあたりの変動費」と「1時間あたりの固定費」を正しく把握することで、この仕事ならばいくらの見積もりになる、この仕事であればこれぐらい運賃をもらわないと収支が合わないといった計算をすることができるようになります。これから決まってくる「適正原価」も、もちろんこの考え方に基づいて設計されるはずです。まずは「1時間あたり」ではなく「1日あたり」でもいいただし、まず「簡易的に原価計算を始めてみる」という目的にあたっては、僕は「1時間あたりの固定費」ではなく「1日あたりの固定費」の算出でも十分であると考えます。もちろん「1時間あたりの固定費」まで見た方がより精度が高くなることは理解しつつ、運送会社の現場の実態を勘案してそのように考えています。実際、ほとんどの運送会社においては、積み合わせ等ではなく、チャーター(特定の荷主に貸切)で運行し、尚且つ、1日に複数案件をこなすというよりは、1日に1案件をこなすというケースが多いのではないでしょうか。そうなってくると、「1時間あたりの固定費」をベースに考えて、その案件が5時間で終わるから5時間分の固定費を原価として運賃を計算する、というよりも、「1日あたりの固定費」をその案件の原価として算出した方が、運送会社側はきっちりと利益をあげることができるようになります。この話は、実は「標準的運賃」の距離制運賃表を見るとよくわかります。「標準運賃表」をよく見ると、距離が短い場合は、少し低めの運賃になっているように見えます。これは例えば、片道20kmの仕事は4時間で終わるから、固定費も4時間分で計算しているが故にそうなっているのです。もちろん、その方が厳密かつ適正なのは理解した上で、実際は、1日に2案件目、3案件目の配車ができない運送会社の場合は、1日の固定費を1案件でまかないきることができず、その距離制運賃表に基づけば赤字になってしまうわけです。(ちなみにですが、標準運賃の解説書においては、その点も見越して、そういうケースは「時間制運賃表」を活用してください、ということになっています。)尚、この話をもう少し発展させた先では、1日あたりの固定費を1案件でまかなおうとすることに甘んじず、そこで1日2案件などの配車が可能なように「稼働率を上げる」工夫をすることこそが、運送会社の営業努力であるとも考えています。実際、うまくいっている運送会社のほとんどがこうした考え方を取り入れているように思います。勝手に名前を出しますが、長尺物や重量物の混載を手がけるネットワークであるメタル便なども、恐らくこうした考えに基づいてコンセプトが提示された仕組みなのであろうと推察します。自社倉庫に保管をして輸送を担うという形態を取る場合も、倉庫の家賃という不動産的な考え方だけでなく、稼働率の向上という考えが根幹にある会社がうまくいっているように思います。さて、この「稼働率」の話は、また別のコラムにて詳しく触れていきたいと思います。1kmあたりの変動費と1日あたりの固定費の算出方法では、この「1kmあたりの変動費」と「1日あたりの固定費」を算出するには、どうすればいいのか。これは、「車両別収支」まで終わってしまえば実はとても簡単で、その収支に、「走行距離」および「稼働日数」のデータを紐づけることで算出できます。つまり、原価計算の結果にデジタコのデータ(デジタコが搭載されていない場合は日報の記録)を紐づけるということです。先ほどのSTEP1〜7の続きです。【STEP8】走行距離と稼働日数の紐づけ手順1:その車両の「稼働日数」を入力しましょう※その月に、その車両が何日間運行したのか、デジタコや日報などから集計してみましょう手順2:その車両の「走行距離」を入力しましょう※その月に、その車両が何キロ走ったのか、デジタコや日報などから集計してみましょうこれによって、「1kmあたりの変動費」と「1日あたりの固定費」が算出できるようになります。ちなみに、変動費に含まれるのが、STEP4で集計したメンテナンス費や燃料費です。固定費には、STEP2・STEP3・STEP5・STEP7で計算される、車両費用や保険等の車両固定費、人件費や販管費が含まれます。尚、高速代等の実費は、変動費にも固定費にも含まれません。この「1kmあたりの変動費」と「1日あたりの固定費」が算出できれば、色々な分析や活用が可能になります。もちろん、運賃表を作成し、新しい案件の見積もりや既存荷主との運賃交渉に活用することもできますし、「車両ごとの日々収支」や「荷主別収支」の分析もできるようになります。これらをどのような手順で行っていけるのかについては、また別のコラムで語らせてください。