はじめに実際に、原価計算ならびに車両別収支の算出を進めていくにあたっては、六興実業の「トラック経営の見える化」では、いくつかの独自の管理会計的処理を取り入れています。それらを少し、紹介してみたいと思います。改めての繰り返しになりますが、「管理会計」というものは、あくまで「その会社の経営を適切に管理し、意思決定に活用し、収益向上等の目的に繋げていくにあたって、どのように数字を見ていくのが最適なのか?」ということなので、この処理自体には正解も不正解もないと考えています。僕の観点で、運送会社のトラック経営を見ていこうとしたときに、このような処理があった方が合理的であると思ったということにすぎません。メンテナンス費用を「ならして見る」まず1つ、独自の処理としてあげられるのが、「メンテナンス費用をならして見る」という処理です。トラックのメンテナンス費用(車検やタイヤ交換や一般修理など)は、その発生した月にかなり大きな費用が計上されてしまうという傾向があります。車検に入れると、少なくとも20万円以上、タイミングによっては同時に部品交換や修理が発生して50〜60万円以上かかることもあります。タイヤ交換も、一式を交換すると数十万円かかります。一般修理の場合は、もちろん修理内容によりますが、内容によっては100万円を超えるような費用が発生することもあります。それだけの費用が発生してしまうと、車両別収支を見る際に、車検やタイヤ交換や修理等があったその月のその車両の収益は、言わずもがな赤字になってしまいます。そこで、六興実業の「トラック経営の見える化」においては、「メンテナンス費用をならして見る」という処理を施したパターンの車両別収支も確認できるようにしています。もちろん、そのまま費用を計上した通常の車両別収支も確認できます。ちなみに、「ならして見る」というのが具体的にどういう処理なのかというと、「その月に発生したメンテナンス費用を向こう12ヶ月間に渡って、12ヶ月で割った分を計上する」という処理をしています。これによって、突発的に発生する高額なメンテナンス費用が与える影響を小さくしながら車両別収支を確認することができます。この「ならして見る」というのは、単純な「平均」とは少し違う処理です。言葉で説明すると少しややこしくなるので割愛しますが、イメージ的には「ならして見る」のは、ミルフィーユのように向こう12ヶ月に渡って横倒しされた費用が積み重なっていくようなもので、いわゆる「移動平均」というものです。車両費用をどう見るか?それ以外にも、六興実業の「トラック経営の見える化」においては、車両費用の見方の部分にも独自の処理を取り入れています。別のコラム(トラック経営に「不動産経営」の観点を?)でも少し触れましたが、トラックの車両費用をどのように処理するかも、車両別収支や原価計算において大きな影響を与えます。例えば、今年、新車価格2000万円でリリース契約で取得したトラックを、5年60回払いでリース支払いをすると考えると年間400万円(月間約33.3万円)の車両費用(残価設定や金利等は簡易化のために割愛します)となります。一方で、このトラックを10年間乗り続ける前提だと考えれば、年間の車両費用は2000万円÷10年間で、200万円(月間約16.7万円)となります。また、6年前に2000万円で購入(リース契約ではなく購入)したトラックは、減価償却が既に終了しているので、損益計算書に計上される車両費用としては年間0円(月間0円)になってしまいます。でも、このトラックも10年間乗り続ける前提だと考えれば、年間の車両費用は上記同様に年間200万円(月間約16.7万円)となります。これらを柔軟に見ることができるようにするために、六興実業の「トラック経営の見える化」においては「車両費用を損益計算書上の月額費用で見る(リース月額費用あるいは月間減価償却費用)」というのと「運用予定期間で見る(10年間などの任意の期間)」というのを切り替えて見ることができるようにしています。そうすることで、例えば、今では4000万円近くになるような大型の冷蔵冷凍車を取得した場合に、まともにリース費用や減価償却費用を計上すると、車両別収支が慢性的に赤字のように見えてしまうものを、運用予定期間でも見ることで適正に収益性を把握することができるようになります。あるいは、減価償却が終了していて車両費用が0円となっているから利益が出ているように見える場合も、運用予定期間の車両費用を計上することで、正しく現状の収益性を把握することができるようになります。車両費用の考え方は運賃にも影響するこの考え方の切り替えは、見積もり等にも影響する原価計算(特に1日あたり固定費)にも大きく影響します。先ほど例にあげた、新車価格2000万円のトラックを5年60回払いのリースで購入したとすると、年間400万円(月間約33.3万円)の車両費用、すなわち1日あたり約15,000円(月間22日稼働想定)となります。このトラックを10年運用する想定で車両費用を考えると、年間200万円(月間約16.7万円)、すなわち1日あたり約7,500円の車両費用となります。また、このトラックを購入してから7年が経過し、リース支払いも終了したとなると、1日あたりの車両費用も0円になります。このように、同じトラックでも見方によって、0円〜7,500円〜15,000円と1日あたりの固定費が変わってきます。地場配送で仮に1日に4〜5万円の運賃だとすると、それが車両費用の見方がいかに収益性の判断に影響を与えるかは容易に想像できると思います。もちろん、本来は2000万のトラック、もっというと4000万円のトラックを取得した際にも、そのトラックの月々のリース支払い分を全てまかなうだけの運賃設定ができることが理想だということは重々分かっています。ただ、実際にそうした交渉が荷主さんとの間で成立するかという部分に、現場の難しさがあるというのも事実だと思います。そのときに「実際にこれだけの車両の支払いによる固定費が発生している。でも、この車両は10年間使う予定だから、最大ここまで固定費を下げて考えることもできる。したがって、最低でも運賃はこれぐらいに設定してもらいたい。できればここまで引き上げてもらえるとベストです。」というような交渉ができるか、というのが重要だと考えています。これが「根拠」を示すということです。六興実業の「トラック経営の見える化」においては、そういうことまで考えられるようになっていくことを常に目指して、色々な数字の見方を追求しています。あげればキリがない工夫すべきポイントそれ以外にも、例えば、賞与を毎月の給与に按分して見れるようにしたり、販管費(事務所や配車等の運営経費)を含めて費用計上して見た場合の車両別収支(≒車両別の営業利益)と、販管費を含めずに見た場合の車両別収支(≒車両別粗利)を見れるようにしておくなど、様々な独自の管理会計的処理を取り入れています。さらに、1つの車両に1人のドライバーさんが専属といっても、実際には土曜日に運行がある際に別のドライバーがその車両に乗ることがあったり、あるいは修理や車検等で別の車両を使うことがあったり、それ以外にもそもそも1つの車両を複数のドライバーさんで乗り回しをするような車両運用をする運送会社さんもあったりするので、六興実業の「トラック経営の見える化」では、各ドライバーさんごとの各車両ごとでの稼働日数に応じて、そのドライバーさんの人件費を按分する処理を行っています。「そこまで必要なの?」と思う人がいるのも事実だと思います。それは本当にその通りで、そこまでしなくても「意思決定に活用し、収益向上等の目的に繋げていく」ことができていれば、それがその会社にとっての最適な管理会計なのだと思います。でも、車両や修理代、はたまた社会保険料など、あらゆるものの値段が上がっていく一方で、働き方改革で稼働の日数や時間を減らしていかねばならないというようなこの難しい時代において、トラック経営を持続可能なものにしていくには、その考え方をどんどん進化させ、アップデートしていく必要があります。これからも、六興実業の「トラック経営の見える化」はそこに向き合い続けていきたいと思います。