トラック経営の見える化の完全解説。Excelを使った原価計算のススメトラック運送業界で利益を確保し、持続的な成長を実現するためには、自社の「原価」を正確に把握し、経営を「見える化」することが不可欠です。本記事では、特にExcelを活用して車両ごとの原価計算を行うための具体的なステップをご紹介します。【導入】原価計算で目指す4つのゴールこの原価計算は、以下の段階的なゴールを目指します 。第1段階: トラック1台あたりの原価や損益(月次)を把握する。第2段階: トラックごとの1kmあたり・1日あたりの原価を把握する。第3段階: 分析結果を見積や運賃交渉に活用する。第4段階: トラックの想定使用年数や、待遇改善を加味した原価を算出する。ここでは、まず第1段階の「月次の損益」を把握するための基本ステップ(手順①〜⑦)と、第2段階・第3段階へ進むための「発展編」をご紹介します。Excel原価計算の基本7ステップ手順①:車両とドライバーの紐づけまずは、原価を紐づけるための土台を作成します。まずはこちらからExcelをダウンロードしてください。→ダウンロードリンクでは、順番に説明していきます。車両の一覧作成: 車番は必須とし、必要に応じて車種(積載量、形状、装備など)も記載すると分かりやすくなります。トレーラーの場合は、メインの組み合わせとなるヘッドとシャーシをセットにします。メインドライバーの紐づけ: 各車両に「メインドライバー」を紐づけます。予備車には「予備車」と入力しておくと管理しやすいです。頻繁にドライバーの乗り換えが発生する場合は、原価計算が難しくなります。最初は、多少の乗り換えには目をつぶるなど、シンプルな方法から始めるのがおすすめです。手順②:車両の償却費(減価償却費・リース料)の入力車両の取得にかかる費用を月々に分割して計上します。契約形態の確認: 車両がリース契約か購入かを調べます。月々の支払額の入力:リースの場合: リース契約書を確認し、月々の支払額を入力します。購入の場合: 購入契約書か固定資産台帳を確認します。固定資産台帳の「当期償却費合計」などを12ヶ月で割ると、1ヶ月分の償却額となります。手順③:固定費の入力(法定諸費用・保険・その他)車両を所有・維持するために毎月かかる固定費を入力します。法定諸費用・任意保険: 車両ごとにかかる「法定諸費用」(自動車税、自動車重量税、自賠責保険など)や「任意保険」(車両保険、貨物保険など)を入力します。法定諸費用は年間払いになっていることが多いため、12ヶ月で割って月額を入力します。会社全体で支払っている車両保険などは、車両台数で割って1台あたりの金額にします。駐車場代・その他固定費: 車両ごとの「駐車場代」や「その他固定費」(デジタコ通信費、携帯代など)を入力します。駐車場代も、そこに駐車している車両で割って1台あたりの金額にします。その他固定費は、ドライバーに付与しているものや車両に取り付けているものが対象です。手順④:変動費の入力(メンテナンス・燃料・高速代)運行によって発生する変動費を入力します。メンテナンス費: 「3ヶ月点検」「12ヶ月点検(車検)」「タイヤ」「アドブルーやオイル」「一般修理・部品購入」などのメンテナンス費用を入力していきます。燃料費: 車両ごとにかかった「燃料費」を入力します。この際、給油量も取りまとめておくと、後の燃費計算に活用できます。高速代: 車両ごとにかかった「高速代」を入力します。手順⑤:人件費の入力車両に乗るドライバーにかかる人件費を計上します。総支給額: その車両に乗っているメインドライバーへの「総支給額」を入力します。会社負担分の社会保険: 会社負担分の「社会保険」を入力します。社会保険は会社と従業員で折半のため、「給与明細(支給控除一覧表)の社会保険料控除額」がそのまま「会社負担分の社会保険」となります。手順⑥:売上の入力車両が上げた売上を入力します。売上・収受高速料金: 車両ごとの「売上」と「収受高速料金」を入力します。その他売上: 荷役代などを収受している場合は、「その他売上」に入力します。手順⑦:販管費の入力管理部門のコストを車両に割り振ります。販管費(販売費及び一般管理費): 車両ごとの「販管費」を入力します。販管費には、管理者や役員、事務員の給料、事務所経費などが含まれます。毎月の厳密な計算は手間がかかりすぎるため、決算書などの販管費データを参考に、車両1台あたり月いくらとするか設定してしまうのがベターです。【結果】月次利益と利益率の算出手順①〜⑦のすべてを入力することで、当該月の車両ごとの「利益」および「利益率」を算出することができます。【発展編】次のステップへ:見積・運賃交渉への活用さらに一歩進んだ分析を行うことで、経営戦略に活かすためのデータが得られます。発展編①:稼働日数の入力その月に、その車両が何日間運行したのか、「稼働日数」を入力します。デジタコや日報などから集計してみましょう。発展編②:走行距離の入力その月に、その車両が何キロ走ったのか、「走行距離」を入力します。デジタコや日報などから集計してみましょう。発展編の活用発展編までを全て入力できれば、車両ごとの「1kmあたりの変動費」と「1日あたりの固定費」を算出することができます。これにより、「見積や運賃交渉の参考データ」の準備が整い、より根拠に基づいた経営判断が可能になります。まずは、この簡易的な手法から「見える化」を実践し、利益を確保できるトラック経営を目指しましょう。「まずは全体像を押さえてから、Excelに触りたい」という方は、原価計算から運賃表作成までの流れを整理したこちらのコラムから読むのがおすすめです。コラム:原価計算から運賃表作成の考え方「標準運賃や適正原価と、自社の原価計算をどうつなげればいいのか?」という疑問が出てきた方は、標準運賃の背景と限界、六興としての付き合い方をまとめたコラムもセットで読むと整理が進みます。コラム:標準運賃について原価計算の仕組みができてくると、「この数字をもとに、どこまでドライバーさんに還元できるか?」という次のテーマが見えてきます。労働分配率や求人ベンチマークを使って、 給与アップに原価計算を活かす具体的な考え方 を知りたい方は、コラム:見える化を給与アップに活用するには もあわせてご覧ください。Excelで車両ごとのコストを整理していくと、「この数字をもとに、いつ入れ替えるのが得なのか?」という問いが自然に出てきます。燃費・メンテナンス・償却残高の3つの軸から、 車両入替の判断に原価計算をどう活かすか を知りたい方は、コラム:見える化を車両入替判断に活用するには をあわせてご覧ください。Excelで車両ごとのコストを整理していくと、「この数字をもとに、いつ入れ替えるのが得なのか?」という問いが自然に出てきます。燃費・メンテナンス・償却残高の3つの軸から、 車両入替の判断に原価計算をどう活かすか を知りたい方は、コラム:見える化を車両入替判断に活用するには をあわせてご覧ください。原価計算の土台ができると、次の一歩は「その数字を、荷主別・日別・月次の仮想収支にどう展開するか」です。荷主別の採算管理やデイリー収支表、月次仮想収支の考え方を具体的に知りたい方は、コラム:荷主別利益、デイリー収支表と月次仮想収支 を読み進めてみてください。