始まりました。社会インフラの横丁から。この番組は、社会の当たり前を支えてくれている人たちの声を、人情味あふれる六興村の隅っこにあるこの横丁からお届けするラジオです。本日も温かいお話や苦労したお話、心に染み渡るお話、そしてこれからの未来につながるお話をお届けしてまいります。 第13回目のゲストは、前回に引き続き、埼玉県春日部市の運送会社、ピーアール株式会社の代表取締役、野口知司氏をお迎えします。前回、売り上げの約4割を一気に失うという衝撃の過去を語ってくれた野口社長。今回は、そこからのV字回復の物語です。危機的状況の中で見出した新たな活路、そして「下請け」から脱却し、荷主と対等なパートナーシップを築くための「根拠ある運賃交渉」の極意に迫ります。%3Ciframe%20data-testid%3D%22embed-iframe%22%20style%3D%22border-radius%3A12px%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fopen.spotify.com%2Fembed%2Fepisode%2F79RX60VjhOCrbdYNeQftX8%3Futm_source%3Dgenerator%22%20width%3D%22100%25%22%20height%3D%22352%22%20frameBorder%3D%220%22%20allowfullscreen%3D%22%22%20allow%3D%22autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20fullscreen%3B%20picture-in-picture%22%20loading%3D%22lazy%22%3E%3C%2Fiframe%3E危機からの脱却、そしてイベント物流との出会い段林: 前回に引き続き、ピーアール株式会社の野口社長にお越しいただいております。よろしくお願いします。野口社長: よろしくお願いします。段林: 前回、売上の3割〜4割、車で言うと10台分ぐらいの仕事をさせていただいているある荷主さんとのご契約を、断腸の思いで一旦お断りをされたというお話で終わりました。最初はやはりその穴を埋めるのに、トラボックスさんなども使いながら苦労されたとのことでした。そこから、どれぐらいで「一旦落ち着いたな」という感覚になられたのでしょうか。野口社長: とにかく「営業しよう」「仕事を取ろう」という意識で動いていた結果、2024年に入った頃には、コロナの影響もかなり薄れてきていました。段林: なるほど。野口社長: イベント関係の仕事がすごく盛んに始まりだしていた時期だったんです。そこにターゲットを絞ってというわけではないのですが、ある協会のメンバーから「こういった案件があるのだけれど、相談できるか」とお話をいただきました。それがイベント関係、つまり、展示会やコンサートといった案件だったのです。「ぜひ、お話を伺いたい」ということで営業をかけに行き、そこで「弊社の場合は、この金額で全国どこでも行きます」という見積もりを出させていただきました。その際、「割高だけど、全部をやってくれる上に、やり取りのレスポンスも早いので、他社から御社に切り替えます」という、ありがたいお言葉をいただけたんです。段林: すごいですね。野口社長: そこから、イベント関係の案件に積極的に取り組むような形になっていきました。その頃から相乗効果でトラックの回転も、朝早くから動いているという状況になっていきましたね。「高いけれど頼みたい」と言わせる根拠ある交渉術段林: 先ほど「割高だけど」というお話がありましたが、運賃的には、比較的高い設定だったということですよね。野口社長: そうですね。やはり、標準的な運賃を適正化しようという動きがある中で、荷主さんもそういった情報が入っているので、言い値で邪険にできない世の中になってきたと感じています。段林: はい。野口社長: その上で、我々がエビデンスをしっかりつけて、「だからこの金額なんです」というご説明をする。なぜこの金額なのかということをしっかり伝えられれば、獲得できるのではないか、と私は思いました。その通りにやった結果、一言「割高だけど」とは言われましたが、「ぜひお願いします」と受け入れていただけたんです。段林: そこでも「根拠」というワードが出ましたが、右腕である塚田様が、元々商社で働かれていたというところも反映されているわけですよね。野口社長: そうですね。燃料の高騰もそうですし、人件費も日々上がっています。それと、会社を維持するためには、ある程度の余剰金がないといけない。その分もしっかりと書類に添付して、ご説明できる状況をまず作ることです。段林: なるほど。僕たちも荷主さん側とコミュニケーションさせていただくことが多くて、逆にお伺いするのは「運賃を上げてくれ」という話がきても、「結局、どれぐらい上げていいのかがよく分からない」というお話なんです。野口社長: 分かります。段林: 確かに、人件費も上がっているし、燃料も上がっているでしょう。でも、燃料が10円上がることが、見積もりに本当にどれぐらいインパクトがあるのかが分からないから、それで1,000円上げるというのも、また次上がったらどうするのかも分からない。だから判断できない、というお話です。野口社長: はい。段林: 逆に、そうやって教えていただけたら、それはそれでお互い様だから考えようとなるじゃないですか。もちろん中には無理難題を言う荷主さんもいらっしゃるかもしれませんが、大半はそうやってコミュニケーションしていただけると、荷主さん側もすごく安心される気がしますね。野口社長: 「ああ、そうなんだ。じゃあこれだけ変わるんだね」と納得できますからね。あとは言い方というか、「手残り金」と言うんですかね……「会社の全てを出した上で、手残りもこれだけ残したいんです」という風に、うちは25%は手残りにしたいですと、そういった数字をしっかり出すことによって、先方も理解してくれるというのはありますね。そこは大事ですよね。「運送屋さん」から「パートナー」へ段林: それって、本当に「パートナー」ですよね。一般的に僕が業界の方々と話していて思うのは、やはり運送業は物を運ぶという中で、一番下請けの下請けじゃないですか。前回のゲストである株式会社清光ラインの清水社長とお話した時も、「運送屋さんと言われるのがすごい嫌だ」という話がありました。一番下請けだと見られるのが嫌だと。でも、今みたいなやり取りができると、我々もこれぐらいちゃんと残したい、でもこうだよね、という話ができて、すごく対等で、本来あるべき姿だなとすごく思いました。野口社長: そうですね。前回お話ししたように、当初は「料金ありきでやってください」という話だったのが、そうではなくて、我々が料金をまず提示して、その料金の理由もちゃんと載せて、「どうですか?」と提案するスタイルに変わってきましたね。段林: そうですよね。ちゃんと僕らなら価格ってこうなんです、だからこれで受けます、受けません、というのは当たり前のことな気がします。 僕自身、運送業界がまだ浅い中で実際に運送業に触れると、「配車表に運賃がまず空欄で来て、一旦配車を埋めてから、後々運賃が分かって入る」みたいなのが慣習的に残ってはいるじゃないですか。野口社長: ありますね、はい。段林: 業界の外部から僕は一旦この運送業に来て、初めは「運送業ってそういうもんなんだ」と、ちょっとカルチャーショックを受けつつも、逆に「そういうもんなんだ」と受け入れてしまった自分もいます。 でも一方、そういった野口社長のような動きって、よく考えたら当たり前にそうやってやるべきだし、当然のことだなと思います。大変だし不安ですし、それで断られたらどうしようもないという話もあるかもしれないですけど、この業界を含め、サステナブルにやっていくためにはすごく重要な姿勢だなと改めて思いました。野口社長: やっぱり下に見られちゃうというのは、業界的にも無くせない部分がすごくあるんです。 でも、よくガソリンスタンドとかにタンクローリーを運転しているドライバーさんがいると思うんですけど、その方を見ていただくと、必ず背広ではないんですけど、ネクタイしてるんですよ。段林: はいはい。野口社長: あれを見た時に「かっけえな」と思いました。やっぱり運送屋だから作業着──もちろん作業着は作業着でいいんですけど、もう少し我々自身で価値を上げてもいいんじゃないかなと思うんです。 だからスーツ着て配送してもいいじゃんと、最初は本当にそういう思いがありました。それだけやっぱり、そういう見られ方をされていたというのがあるので、業界を少し底上げしたいなっていう気持ちもありますし、今の世の中がそういう話題にもなっているので、このきっかけを逃しちゃいけないなというのはありますね。【★コラム】 プロ意識の象徴「タンクローリー運転手」の規律 対談の中で野口社長が「かっこいい」と憧れを語ったガソリンスタンドのタンクローリー運転手。彼らがネクタイを締め、整然とした身なりで作業をする背景には、取り扱う荷物が「危険物(ガソリンや灯油)」であるという事情が大きく関係しています。 ひとつのミスが大事故につながるため、彼らには高度な資格だけでなく、極めて高い規律と安全意識、そして手順の遵守が求められます。その「プロフェッショナルとしての厳格さ」が、制服やネクタイといった清潔感のある身だしなみに表れています。野口社長が目指す「運送屋の地位向上」とは、単に服装を変えることではなく、彼らのような「プロとしての誇りと規律」を自社のドライバーにも浸透させたいという現れと言えるでしょう。社員の未来を守るための利益確保段林: でもやっぱり、そういう取り組みをされていくのは、根源的には御社のドライバーさん……一番最初に振り返りで仰っていましたけど、「今となってはすごく反省するんだけど」というお話がありましたが、やはり経営する中で、ドライバーさんとか社員さんへの思いというのが大きく変わってきたことなどあったりされるんですか?野口社長: ありますね。やっぱ今いるメンバーは、僕はもう終身雇用で最後まで一緒にいたいなという気持ちでいますし、最初はそれを皆さんに伝えます。 例えば退職金制度やボーナスなど、我々の業界は、そういうのを出すのが結構難しいんです。でも、それが一般的に出せるような業界にしていかないと、全体が底上げしないんじゃないかなと思います。そこができる会社に育てなきゃいけないっていうのが、私の最大の責任というか義務なのかなと思っています。まだ全部はやれてないですけど、 そのためには、お客様である荷主さんともしっかりとした交渉を行い、しっかりとした料金をいただく。これをなくしては、やっぱりその目標は達成できないので、そのような形で今動いています。段林: 終身雇用に関して、僕も昔の日本はそういう家族的な経営があったが故の強さがあったと思っています。昔の日本の、それこそ京セラさんとかソニーさんとか、ああいうエピソードを私の履歴書などで読んでいると、すごく家族的な経営で、そこに安心ができるから会社でより力を発揮してくれる、みたいな。実はすごく憧れてるんです。野口社長: はい。段林: 今のお話を聞いて、素敵だなと思いました。 あとやっぱり、率直にお伺いしてみたいことがあります。運送業ですごく難しいなと思うのが、「年功序列」です。長く一緒に働いていくとなった時には、やっぱり勤務に応じてお給料も上げていけたらいいなというのももちろんあると思うんです。一方で運送会社さんは、そのドライバーさんが長く勤務をしてるからといって、荷主さんからいただける金額が増えるわけではないじゃないですか。つまり、長く在籍してくれる人がいればいるほど、年功序列的仕組みを導入した瞬間に、原価が上がってしまうという。だからこそ運送会社さんってよくあるのが、「走った分だけ」っていう歩合制のところが多いイメージなんです。野口社長: はい、そうですね。段林: 仮に年功序列を入れないにしても、お給料を毎年毎年ちゃんと引き上げていくっていうことはすごく難しいなと思うんですが、実際どうですか?野口社長: 確かに難しいですね。難しいですけど、うちは社内制度というか……勤務年数が長ければ長いほど、例えば2年目の方はいくらかお金をつけていくとか、5年目の方は2年目の方の倍以上つけるとか、細かい数字ですけど、そういう制度を導入したりしています。 あとは、先ほど言ったように、ボーナスが出せる会社にするためにはどうあるべきかをまず経営側が考えて、形にできるように持っていくとですね。 段林: 先ほどおっしゃった25%は手残りに残すというところも、ボーナスの原資ですよね。ちゃんとこれが残って、経営として今回投資したもので最後に残ったら、じゃあいくらかはまた来年の投資に回すけど、この分はじゃあ今年みんなでちゃんと分配しようね、と。野口社長: はい、そうです。段林: 実際、御社で言うと賞与というかボーナスの支給って今はどうなっていますか?野口社長: 毎年出せているんですけど、「ボーナス」というよりは「お気持ち」程度になってしまっています。まだ、ある程度のまとまった額は出せていないのですが、今期ぐらいから、しっかりと出せるようにしていきたいなと思っています。段林: 大手など、ニュースを見ていると「夏のボーナス今年は100万円です」みたいな夢のような数字が出てるじゃないですか(笑)。流石にそれは厳しいところがあると思いますが、よくある「月給の1ヶ月分」とか「2ヶ月分」とか、目安で目標としている感覚はありますか?野口社長: 1年間で月給の2ヶ月分は出したいなというのはありますね。夏と冬で1ヶ月分ずつぐらいは。そこまで持っていけたら、強い運送会社になるんじゃないかなと思います。段林: そうですね。それぐらいになってくると、大型のドライバーさんであれば、ちゃんと500万円を超えて600万円近いお給料を、というイメージになってきますよね。中型のドライバーさんでも、500万円超えるお給料になってくると、色んな会社の中でも高くなってきますよね。国の統計だと今の運送業の平均が400万円台、大型ドライバーさんだと450万円と言われてますけれど、それをかなり超えてくるとすごくいいですよね。野口社長: まだできてないんですけどね(笑)。まだ目標の段階です。段林: この番組の視聴者はまだまだ少ないですが、 将来もしこの部分を聞いていただく方が増えた時に、「あ、2025年の5月6月頃に、ピーアールさんこんなこと言ってたけど、来年再来年どうなってるかな」と期待していただけるかもしれないですね。 でも何かできそうな雰囲気を、話しぶりからすごく感じますし、すごく楽しみだなと思いました。野口社長: はい。段林: ありがとうございました。今回はこのあたりにして、次回は、これからの未来みたいなところや、冒頭僕が申し上げた、能登の災害の時の取り組みのお話など、そのあたりも伺えればと思います。本日はありがとうございました。野口社長: ありがとうございました。▼前回のエピソードはコチラ👇https://www.rokko-jitsugyo.co.jp/news/wY61u0AY▼六興ラジオ【社会インフラの横丁から】シリーズはコチラ👇https://www.rokko-jitsugyo.co.jp/news/category/rokko-radio▼六興実業公式LINEはコチラ👇https://lin.ee/CBj09Eq