始まりました。社会インフラの横丁から。この番組は、社会の当たり前を支えてくれている人たちの声を、人情味あふれる六興村の隅っこにあるこの横丁からお届けするラジオです。本日も温かいお話や苦労したお話、心に染み渡るお話、そしてこれからの未来につながるお話をお届けしてまいります。今回のゲストも、前回に引き続き、三重県亀山市で運送業を営む株式会社カワキタエクスプレスの川北辰実社長です。給与制度の改革や組織の崩壊といった壮絶な舞台裏、そして「運ぶだけじゃない価値」を追求する現在の社風をいかに築いたのか。経営者ならずとも心に響く、共感と覚悟の物語を伺います。%3Ciframe%20data-testid%3D%22embed-iframe%22%20style%3D%22border-radius%3A12px%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fopen.spotify.com%2Fembed%2Fepisode%2F6Dm43GJmOTbxvpwbaKU1iC%3Futm_source%3Dgenerator%22%20width%3D%22100%25%22%20height%3D%22352%22%20frameBorder%3D%220%22%20allowfullscreen%3D%22%22%20allow%3D%22autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20fullscreen%3B%20picture-in-picture%22%20loading%3D%22lazy%22%3E%3C%2Fiframe%3E%0A給与制度改革と、現場に突きつけた「小学生のようなルール」段林:それでは今回もよろしくお願いいたします。川北社長:よろしくお願いします。段林:前回、月給制に変えたというお話を伺いましたが、2010年代後半ぐらいの話なのかなと思ったらそれが2007年頃でまだリーマンショックの前ですよね。周りの運送会社もドライバーさんも、なかなか理解できない難しい部分があったんじゃないでしょうか。川北社長:そうですね。それは今も続いているんですが、実際に月給制を導入したのは2009年の4月なんです。最初は歩合制だったので、「歩合」と「月給+残業代」の計算を半年間並行して、金額が高い方を払うという形をとっていました。段林:はい。川北社長:歩合が勝ったら歩合を払う。時間外の計算が勝ったらそっちを払う。そしたら、多少のデコボコはあっても、それほど遜色がなかったんです。それを証明してから「じゃあ月給制にするよ」と踏み切りました。と同時に、評価制度も入れたんです。段林:評価も同時に。川北社長:それで何が起こったかというと、今までだったら歩合なので「これに行けば2万円になる」「これなら1万5000円だ」と、彼らは自分で計算できたわけですよね。それが仕事の張り合いになっていた。ところが、その張り合いがなくなったんです。さらに評価制度と同時に、「靴は揃えましょう」「名札をつけましょう」といったルールを決めたんです。当時はまだ運転中に携帯電話で喋っている人が多い時代でしたが、「必ずイヤホンマイクをつけて話しましょう」と。この3つをを徹底しようと決めました。段林:なるほど。川北社長:例えば靴を揃えていないと「はい、罰金1000円」、僕が車を走らせていて喋っている社員を見つけたら「喋ってたな、罰金1000円」ということをやり出しました。そうしたらだんだん「なんか窮屈や」「なんでこんな小学生みたいなことせなあかんねん」となってきて、退職者が出始めました。給料はそんなに変わらないのにね。「ナンバーツーが辞める」——24人の会社を襲った最大の危機川北社長:一番最悪だったのは、2011年の夏頃です。「ナンバーツーが辞めます」「ナンバースリーも辞めます」、さらにその12月までに、ベテランドライバーが6人辞めることになりました。当時、まだ24、5人の会社ですよ。段林:ええ。川北社長:ましてやそのナンバーツーは、周りからも「お前が次の社長か」と言われるくらいの存在でした。周りもびっくりしたけど、僕自身も本当にびっくりしましたね。半年間、ガタガタガタっとなって。そこでもう一度、僕がドライバーと向き合わなきゃいけないとなった時、あるドライバーに注意をしたんです。そうしたら、「『そんなことしてると社長が怒るからやめとけ』と、ナンバーツーだったあの人にも言われていました。」と言われたんです。それを聞いた時に「いや、そうじゃないやん」と。段林:はい。川北社長:僕が「こういうことはやめた方がいい、こっちの方向に行こう」と言うことに対して、共感してくれてないといけません。それを「社長に怒られるからやめとけ」というのは、共感じゃないですよね。段林:そうですね。川北社長:これがまずかったんだなと思って、そこから採用も「共感してくれる人を採用する」に変わりました。一時は本当に売上が落ちましたよ。投資はしたけれど売上も利益もガタ落ち。最高4億円あった売上が、3億2000万くらいになって、赤字が3000万円。そんな状態が3年くらい続きました。段林:ああ。川北社長:最終的には2億7000万まで落ちました。でも、その頃には利益体質が改善していたので、赤字幅は数百万円で済んでいたと思います。でも、それくらいのことが色々ありながら進んできました。「うちは給料が安い」と言われても譲れないもの川北社長:今でも月給制は珍しいし、多くはないと思います。今は2024年問題で「労働時間を管理して残業代を減らしましょう」と言われていますが、管理さえしていない会社が多くあります。うちは当時から管理をし始めましたが、周囲の会社からの理解もないけど、何よりドライバーからの理解がありませんでした。よその会社に行けば、頑張って走った分だけ時間に関係なく給料が高くなる、みたいなところもありますから。だから今でも「うちの会社は給料が安い」と言われて辞めていく人はいます。段林:うんうん。川北社長:挨拶や責任感などの評価は関係なく、何でもいいから走ってお金にしたいというところへ行くわけです。うちはそういった研修もいろいろしていますから、それが合わずに辞めていく。うちは未経験者を主に採用しているんですが、未経験者を入れられる会社はまだ少ないんです。そうすると、うちで2〜3年勤めて大型免許も取れるようになった頃に、稼げる会社へ行く、ということが起きはじめました。段林:せっかく免許も取ってもらったのに……という思いはありますよね。川北社長:ありますね。段林:でも、第1回でおっしゃっていた「ドライバーこそが運送会社の商品になる」という考え方を浸透させるのは、やはり一筋縄ではいかない。川北社長:難しいですね。お客さんですら、そこを求めていない場合もありますから。多少柄が悪くても、挨拶ができなくても「所詮トラックドライバーなんてそんなもんでしょ」と思われている。電話応対ひとつとっても、どこにかけたのか分からないような会社もあります。そういうレベルでは運送業は「底辺の仕事」と言われたこともありますが、そう思われても仕方ないですよね。「5S活動」が変えた、当たり前のレベル段林:今日、収録が始まる前の雑談で、川北社長が「六興実業とお付き合いしている会社はいい会社が多いでしょ」と仰ってくださいましたが、その傾向はあるなと感じています。ポッドキャストに出演してくださる経営者の皆さんは共通して、「ドライバーが下に見られるのを何とかしたい」「憧れる仕事にしたい」と仰います。川北社長:ほう。段林:例えば、以前お話しした壬生の有限会社MIYABIさんのところも、事務所へ行くと机が全て前を向いていて、全員が気持ちよく挨拶してくれます。事務所も綺麗だし、トラックもピカピカで、ドライバーさんもしっかりされています。僕らが駐車場所でどこに停めようか迷っているとすぐに案内してくれたり。そういうのは、社風として出るんだな、すごくかっこいいなと思います。川北社長:うちは合格点ですか?段林:いや、めちゃめちゃいいと思いますよ。やっぱり、よく本に書いてある「整理整頓から」というのは、あながち嘘じゃないですよね。川北社長:本当にそうだと思います。やっぱり、挨拶、身だしなみ、整理整頓、掃除。だから、うちは何年か前にチームビルディングのために「5S活動」をやり出したんです。段林:はい。川北社長:整理整頓チーム、清掃清潔チーム、しつけチーム、など、各チームで1年間、結果を出してプレゼンしましょうという取り組みをやりました。その時はみんながどこかしらを掃除したり、整理整頓したりしていました。そこで整い出したところはありますよね。段林:なるほど。川北社長:でも、それを継続するのは難しくて、最近入った子の中には掃除をしない子もいます。ただ、仕組みとしてそういうのは大事ですし、最近入る子には面接の時から話をしているので、基礎はありますよね。段林:当たり前のレベルがどんどん上がっていきますね。川北社長:その時期からは新卒か、20代の未経験者しか採用しないようになりました。【★コラム】一般論としての「5S」の定義と目的5Sとは、職場環境の維持改善のために徹底すべき5つの要素「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」の頭文字(S)を取ったスローガンです。もともとは日本の製造業から生まれた概念ですが、現在は物流、建設、医療など幅広い業界で「仕事の基本」として導入されています。・整理(Seiri):要るものと要らないものを分け、不要なものを捨てる。・整頓(Seiton):必要なものをすぐに取り出せるよう、置き場所とルールを決める。・清掃(Seisou):掃除をして細部まで点検し、不具合に気づける状態にする。・清潔(Seiketsu):上の3S(整理・整頓・清掃)を徹底し、きれいな状態を維持する。・しつけ(Shitsuke):決められたルールを正しく守る習慣をつける。単なる「お掃除」ではなく、「無駄を省き、安全性を高め、働く人のモラルを向上させる」ための経営戦略として位置づけられています。川北社長がチームビルディングに活用したのは、この5Sこそが「プロとしての品質」を支える土台だと確信していたからです。屈辱的なクレームと「見た目」のこだわり川北社長:新卒採用を始めた当初は、まだ経験者や年配の方も採用していたんです。でも、今の場所に移って仕事が増えだした時に、経験者を入れたら、うちは運ぶ「品質」には自信があったのに、お客さんからクレームばかり来るようになりました。段林:おお。川北社長:当時のナンバーツーも、新しい建物を建てた後だったから「売上を上げなきゃいけない」と必死で、どちらかというと売上ベースで動いてしまっていました。でも、やっぱり中身が大事なんです。お客さんから「こんな簡単なこともできないんだったら、もっと難しい仕事を出してやろうか」なんて屈辱的なことも言われました。段林:うわあ。川北社長:うちは今、制服を割と自由にしているんですね。当時も黒や赤のTシャツを作ったんですが、荷主さんから「お前のところみたいな赤いTシャツを着ていて、こんな仕事しかできないのか」と言われたり。ちょっとちゃらけていると見られたんでしょうね。段林:うん。川北社長:僕は「Gジャンにジーパンの制服でええやん」と言っていたくらいですけど、当時は「社長、そんなことしたらクレームしかないです」と止められました(笑)。今はようやく、そこに行けるくらいの中身が伴ってきましたけどね。段林:見た目と仕事の質が追いついてきたわけですね。川北社長:そう。だから、うちはピアスも髪色も自由ですけど、「もし第一印象が悪かったとしても、それを覆すくらいのいい仕事ができなきゃいかん」と言っています。それができないんだったら「髪を真っ黒にしろ、ピアスを外せ」と言っています。結局、どんな行動ができるかが大事なんです。そこが定着するまでには、人がごそっと辞めてから7、8年はかかりました。ようやく元が見えてきたという感じです。「共感」こそがビジネスの根っこにあるもの段林:ちなみに、ナンバーツーやナンバースリーの方が辞められた理由というのは、振り返ると何だったんでしょうか。川北社長:結局、さっき言った「共感していなかった」ということですね。「言われてやらされている」状態だったんです。彼らにとっては、靴なんて揃えなくてもいいし、ドライバーなんてそんなもんでいいじゃないかと。なのにそういうことをしなければいけないのが納得できない。段林:はい。川北社長:納得していないところに、僕から「売上も上げろ」と言われる。僕は「結果論として売上を上げろ」と言っているわけで、「売上を追いかけろ」という意味で言っていたわけではありません。でも、彼らにすれば「売上も上げないといけないのに、なんで挨拶や身だしなみを細かく言われなきゃいけないんだ」と。段林:それで人も辞めて生産性が落ちれば、さらに売上を上げにくくなりますよね。川北社長:そこについてこれなくなったんでしょうね。だから、そこからは本当に「共感」をベースに変えてきました。それでも最近また色々あって、ハードルが上がったところなんです。段林:創業から色々な荒波の中で、最終的に「共感」という大事なところに辿り着いたんですね。川北社長:すごく大事なことだと思いますよ。段林:六興実業の名刺の裏にも、「そして応援されよう」という言葉が書いてあります。自分たち同士でも、お客さんに対しても、最後に応援される存在でありたい。その「共感の輪」を広げることこそが、ビジネスにおいて、お金じゃない一番根っこの大事な部分かなと思っています。川北社長:はい。段林:そういう思いを持っている経営者さんの声を届けたいと思って、このポッドキャストもやっています。だからその「共感」というキーワードがすごくいいなと思いました。「運ぶだけじゃない」というのが運送会社のプライドだというのを、強く感じました。川北社長:でも、運ぶだけ見られがちなので。それをどう変えていくかという話ですね。段林:そこから今に至るまでのさらに深いお話は、次回最終回で伺わせていただきます。今回はありがとうございました!川北社長:はい、ありがとうございました。▼前回のエピソードはコチラ👇https://www.rokko-jitsugyo.co.jp/news/h9dBPMkG▼六興ラジオ【社会インフラの横丁から】シリーズはコチラ👇https://www.rokko-jitsugyo.co.jp/news/category/rokko-radio▼六興実業公式LINEはコチラ👇https://lin.ee/CBj09Eq