始まりました。社会インフラの横丁から。この番組は、社会の当たり前を支えてくれている人たちの声を、人情味あふれる六興村の隅っこにあるこの横丁からお届けするラジオです。 本日も温かいお話や苦労したお話、心に染み渡るお話、そしてこれからの未来につながるお話をお届けしてまいります。今回は、物流業界のDXを推進するスタートアップ、アセンド株式会社の日下瑞貴(くさか みずき)社長をゲストにお迎えしました。 運送・物流業界に向けたサービスを提供する「スタートアップ」として、ホストの段林率いる六興実業とは、いわば競合の関係にもあるアセンド。しかし、その発信内容や取り組みには、業界への深いリスペクトと本質的な課題解決への情熱が共通しています。哲学を学び、シンクタンクで国の政策に関わっていた日下社長が、なぜ泥臭い物流の世界へ飛び込んだのか。そして、妊娠中の奥様に起業を告げ、生まれたばかりの子供とエンジニアが同居する「自宅合宿」から始まった創業期の壮絶かつ温かいエピソードなど、ロジカルな経営手腕の裏側にある「人間・日下瑞貴」の魅力に迫ります。%3Ciframe%20data-testid%3D%22embed-iframe%22%20style%3D%22border-radius%3A12px%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fopen.spotify.com%2Fembed%2Fepisode%2F5UHy70GYP0eXjNGwB7KeJu%3Futm_source%3Dgenerator%22%20width%3D%22100%25%22%20height%3D%22352%22%20frameBorder%3D%220%22%20allowfullscreen%3D%22%22%20allow%3D%22autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20fullscreen%3B%20picture-in-picture%22%20loading%3D%22lazy%22%3E%3C%2Fiframe%3E六興実業との出会い段林: 今回は特別編、番外編ということで、アセンド株式会社の日下社長にお越しいただきました。よろしくお願いします。日下社長: よろしくお願いします。段林: 日下さんに自己紹介をいただく前に、私からどんなご縁だったかというお話をさせていただきます。僕ら六興実業も運送会社向けにサービスの提供をしている、いわゆる「スタートアップ」という切り口でやっているので、広く見ると競合という位置づけになるかと思います。 僕は以前からアセンドさんのことを認識していて、取り組みの内容や発信の内容がすごく素敵だなと思っていました。「業界のため」と言いながら実際はそうではない会社さんもたくさんある中で、アセンドさんは本気で運送業や物流業にコミットしている感じがして、すごくリスペクトを持って見ていました。日下社長: ありがとうございます。段林: 僕もスタートアップの会合などにはあまり出ないので、いつかお会いするかなと思いながらも機会がなかったのですが、実は近くに接点がありました。アセンドさんが開発や勉強会などを一緒にされている匠技研さん、僕はそこで業務委託をしていたんですよ。日下社長: そうなんですね。前田さんのところですね。段林: はい。以前から名前は伺ったりして、遠からず繋がっていたんですけれど、そんなことをうちのお客様と話している時に「アセンドの日下社長を紹介してあげるよ」といきなり言われまして。僕のイエス・ノーも待たずに電話して、気づいたら繋いでいただいたという(笑)。日下社長: 高岡にいるときに急に電話がかかってきましたね(笑)。段林: そんな感じで、僕の心の準備ができていないままお話しさせていただく機会を設けまして、いろいろお話をして、ぜひポッドキャストに出てくれませんかということで、すごく快く受けていただき、今日のご縁に繋がった次第でございます。日下社長: ありがとうございます。自社で言うのもあれですけど、業界のためにやっているつもりでしたが、競合っぽい会社さんからもそう評価いただいてお声がけいただくこと自体がすごい光栄だなと思っていますので、今日は色々お話しできればと思っています。ぜひよろしくお願いします。段林: 今日は、サービスの紹介というよりは、もっと考え方や、どんな人なのか、どんな思いでやっているのかというところを深掘りしていきたいなと思っています。まずは簡単に、会社のご紹介と自己紹介をいただけますでしょうか。日下社長: 皆さん初めまして。アセンド株式会社の代表をしております、日下瑞貴と申します。1990年生まれの今35歳で、子供が5歳、2歳、1歳と、3児のパパをやりながらスタートアップの経営をしています。 アセンドという会社は2020年の3月に創業した会社で、当時は「物流業界の価値最大化」というミッションを掲げて、運送管理のSaaSの「ロジックス」という製品を提供している、そんな会社です。哲学からコンサル、そして物流へ段林: 5歳、2歳、1歳……すごいですね。僕もパパ起業家で、今年3歳になる娘と今年1歳になった娘がいるので、スタートアップの社長をやりながらぶっちゃけどうなの、みたいな話もしたいんですが(笑)。 ざっくり、社会人になったタイミングぐらいからお話しさせていただければと思います。最初は新卒ではどこにご就職されて、どういう経緯で運送・物流業界に関わることになったのでしょうか。日下社長: 最初は2016年にPwCコンサルティング合同会社という、いわゆる外資系のコンサル会社に入社をして、そこでサプライチェーン系の案件をずっとやっていました。 そこに就職したのも、僕は大学院まで哲学をやっていまして……。一浪したので、25歳までは本を読むことか、ワードで文章を書くくらいしかしたことがなくて。そのまま研究者になるか、就職するかという時に、一回は就職してみたいなと思いました。就職するんだったら実際の経済や製造業、いわゆるサプライチェーンでものを動かしているところで仕事をしてみたいと思いました。そこで外資系のコンサル会社のサプライチェーンの方にいったというのが最初のキャリアです。段林: いわゆるサプライチェーンというと、物流、調達、製造……そういうところに絡んでいきますよね。日下社長: そうですね。段林: その前に一つ気になることが……哲学科だったんですか?日下社長: そうなんですよ。こう見えまして。段林: 僕、嬉しいんですけど、僕も文学部国文学科なんです(笑)。日下社長: そうなんですか! またマニアックな(笑)。段林: 大学時代、本を読むことしかしていなくて(笑)。太宰治とか夏目漱石とか、あの時代の文豪と言われるものはほぼ読んだんじゃないかなあというジブがあるんです。哲学だと何系の研究ですか?日下社長: 僕はアレクシ・ド・トクヴィルという、アメリカのデモクラシーについての本を書いた人の研究をずっとやっていました。 広く言うと、19世紀、20世紀ぐらいに「デモクラシー」という概念が出てくるときに、どう社会が変化し、どう人の考え方が変化し、その中でどういった政治体制やあり方が望ましいのか。そんなことを、アメリカとフランスの古典研究をしながら、ずっと考えてモヤモヤする……そんなことをやっていましたね。 その時、夏目漱石とかも参照で読んでいました。★コラム 民主主義の預言者「アレクシ・ド・トクヴィル」とは何者か日下社長が大学院時代に研究し、今の経営哲学の根底にあるというフランスの政治思想家、アレクシ・ド・トクヴィル(1805-1859)。彼の主著『アメリカのデモクラシー』は、単なる歴史書ではありません。 19世紀、貴族制が崩れ「平等」な社会が到来することを不可避と見た彼は、平等がもたらす「多数の圧制(世論への同調圧力)」や「個人主義(公的な事柄への無関心)」を鋭く予見しました。 彼が危惧したのは、人々が自分の小さな私生活の幸福にしか興味を持たなくなり、巨大な国家権力に管理されることを進んで受け入れてしまう未来です。段林: どういった参照ができるんですか?日下社長: 一言で言うと「内からの近代か、外からの近代か」という言い方をするじゃないですか。結局、僕の関心が日本にあって、という時に、一番デモクラシーができた時はどう考えていたのか。日本に輸入した時にはどう捉えられていったのか。 漱石はそれを「内面」から書いていくわけですよね。それを「坊っちゃん」に落としていって、表層的な態度の変化と、根本的なメンタリティが変わらないことの狭間にいる日本人像みたいなものを書いた、という感じも結構好きでよく読んでいましたね。段林: なるほど……。じゃあ、内村鑑三とか、そういうゾーニングですね。いや、ここだけでもご飯一杯いけそうですが、ちょっと話が違う方向に行きそうなので(笑)。 ビジネスに関わる姿勢として、仕事をしてお金を稼いで成功して、というよりは、どちらかというと「哲学発信」というか、「なぜ人は営み、どういうふうにして世の中が変わっていくのか」みたいな研究興味から、それを机の上じゃなくて、実態として経済の中でやっていこう、という探求心だったんですか?日下社長: 完全にそっちだと思いますね。じゃないと、運送業界向けのクラウド型のERPを作るなんて発想に、そもそもいかないと思っています。 まず商売としてしんどそうじゃないですか。明らかに金になるまでの時間と、かけるコストと、与えられるギブが、直感的に合わないと感覚が良いビジネスマンは思うはずです。多分それをやろうと思えたのは、そもそも運送業とは何なのか、クラウドとは何だったっけ、というのを考える癖があったからできたのかな、とは思っていますね。段林: なるほど。だからいろいろアセンドさんの発信を見ていると、すごく響くものがあるんですね。社風にもありますが、「意図込め」というか、込められているものがすごくある。日下社長: 即断即決系に見えますが、いろんなことをフェアに聞いた上で、いろんな論理を考えた上で、熟考して自分の中では判断しているつもりです。「何でそうしたのか」という意思決定について、全て説明できる自信があるぐらいには、その時の理由や論理を大事にやっています。段林: 今に繋がる考えですね。日下社長: 結構めんどくさい人間だと思います(笑)。段林: 僕は文学部国文学科ですが、思考はラフでだいぶ感覚寄りかもしれないです(笑)。野村総研での「社会システム」への挑戦段林: じゃあPwCさんに入られて、最初から物流部門だったんですか?日下社長: 最初はSAPの導入、販売、生産、調達システムの刷新プロジェクトを、農協団体でやったり大手製造業でやったり、あるいは製薬業界さんと間接材のコスト削減をやったり。物流関係なく、サプライチェーンのいろんな仕事を点々とプロジェクトでやりながらやっていた感じですね。段林: そうなんですね。いわゆるキャディ株式会社の加藤さんみたいな。日下社長: そうですね。段林: 加藤さん、アイスホッケー部の先輩なんですよ。そういう領域だったんですね。その後、野村総研さんですよね?日下社長: 2年間やって、2020年の4月から野村総研の方に移りました。これは、野村総研の「社会システムコンサルティング部」というところに転籍をしたんですが、そこで仕事をしたかったんですよね。 段林: 社会システム……どういったものでしょう?日下社長: 野村総研って、日本で一番古い民間のシンクタンクなんです。私が思うシンクタンクの定義は、民間企業のひとつのイシューを解くのではなく、業界とか産業に対する調査・研究・提言を行うことだと思っています。まさにそれを省庁や業界団体と一緒にやることを主な生業とするのが、野村総研の社会システムコンサルティング部という形でした。段林: 本当に哲学的なんですね。全てはそこから始まるというか。そこで社会システムとして、こうゆうものを紐解きたいみたいなのはあったんですか?日下社長: それは正直あんまりなかったんです。ただやっぱりサプライチェーンだったり、実態経済、実態社会に関与できることをもう少しマクロからやっていきたいという思いでした。当時物流の仕事もしていましたけど、半分は国際通商の仕事だったり、フロンガスの国際規定のルールを作る仕事をさせてもらって、海外を飛び回りながら仕事をしていました。あるいは、中央アジアの国にまだ民間企業が進出できないビジネスチャンスがあるか、そこの規制がどうなっていくかという仕事と、あと半分を物流に関する仕事、みたいな感じでやっていましたね。段林: じゃあPwCさんにいた時は、SAPなどを個別の企業で最適でやって、でもそれだと実際にはいろんな不和があるなというところで、もっとマクロな視点でやっていこうということですね。そんな中で野村総研に入られて、まさにそういったことに取り組まれて、半分は物流のことを、という感じですね。そこから物流に傾倒していくんですか?日下社長: 自分の中では半分半分という感じでやっていましたね。国内的な専門性と、国際含めた能力の関与というところはバランスよくいたいなという思いはありました。ただやっぱり物流の方が、体重が乗ったというか、気持ちは入りましたね。実際に日本で動かしているものですし、すごく課題が大きかったので、「これは解かなきゃいけないな」という気持ちや熱量は強かったです。段林: 「2030年には運送の運び手が35%不足する」ということを算出したのは日下さんだと伺いました。日下社長: 野村総研とプロジェクトでやっていました。段林: まさに当時、そういう研究をして、物流の全体の維持みたいなことをやってらっしゃったんですね。日下社長: そうですね。 ★コラム 業界を震撼させた「2030年35%不足」試算の裏側今やニュースで耳にしない日はない「2030年に運び手が35%不足する」という衝撃的な予測データ。実はこの数字、日下社長が野村総研(NRI)時代にプロジェクトメンバーとして算出した推計がベースになっています。 単なる勘や現場の肌感覚ではなく、日本のGDP成長率、人口動態、産業ごとの貨物変動などを複雑に掛け合わせた「計量経済学」的なアプローチによって導き出されたものです。 当時、このデータが世に出たことで、漠然としていた人手不足への不安が「数字で証明された確実な未来(物流クライシス)」として可視化され、国や業界を動かす決定的なトリガーとなりました。政治家か、起業家か段林: それは何歳ぐらいまでやられていたんですか?日下社長: 30歳ですね。2018年から2020年まで野村総研で、2年間在籍しました。段林: 正直言ってそこから起業ってだいぶジャンプだと思います。あと30歳ということは、お子さんが5歳ということで、ちょうど生まれるぐらいのタイミングだと思うので、結構ハードルの高いジャンプされたと思うんですが、どういう経緯だったんですか?日下社長: PwC2年間、野村総研2年間やって、私は結構「2年」という時間軸を意識しています。普通「石の上にも3年」って言うじゃないですか。でも私は人の2倍の生産性で、2倍の量の仕事をすれば、人より絶対早く能力を身につけられるという哲学を持っています。「2年で絶対一定以上の成果を出して、次のチャレンジができる」ことを目指していきたい、とずっと思っています。学生時代も2年に1回引越するというのが、自分の中でのルールでした。とにかく2年に1回環境を変えて、自分が一番暗中模索なゾーンにもう一度突っ込んで、そこでサバイブして強くなり続けるというのが、自分の強化学習の仕方です。2年間でそれなりに仕事はしたし、それなりに学べたなと思った時に次のチャレンジとして何を一番自分がすべきなのか。その時の選択肢の一つが、「起業」という形でした。 当時、起業するか、転職をするか、政治家になるかで悩んで、実は自民党の政治塾に行ったりもしていました。段林: へえー!日下社長: 結局その道はその当時は選ばなかったですけど、総括したりはしていましたね。段林: ここに僕もシンパシーがありますって乗るの恥ずかしいんですけど、僕も「起業」or「政治家」って考えました(笑)。わかります。日下社長: 社会課題を解決したい人って、思考性が近いと思うんですよね、政治の世界と。段林: そうですよね。でも、政治だと時間がかかりすぎるじゃないですか。 僕の中ではそう思いました。日下社長: 自分がまだ未熟だなと思いましたね。起業家が一番ストレッチだし、あと当時……名前伏せますが、2020年ぐらいに法務省の大臣が収賄で逮捕されてるんですよね。個人的にはびっくりしました。金額も1億円ぐらいで、日本の法律を司る大臣が、たかだか1億……と言ったら怒られるかもしれないけど、学生起業家でも集められるような金で逮捕されて。 どういうテンションなのか全くわからなくて。という時に、やっぱり自分で一定の財を持つ、独立して思考ができる基盤を持つこと。これはシンクタンクにも言えることですが、日米のシンクタンクの一番の違いは、バックが民間の拠出資金なのか、財団なのかというところです。財団の拠出があることによって、特に短期的なリターンではなく中長期を見据えた政策提言とか基礎基本ができるんです。大学も全く同じですよね。段林: なるほど。日下社長: そういったベーシックで安定的な財源があるからこそ、長い時間軸で物事が解決できるということは真理だと思っています。となると、やっぱり自分が誰かに対し依存しなくてはいけないという財的な基盤もそうだし、仲間っていう面もそうだし、あるいはそこで実際物事を提言していく時の自分の知識や能力をトータルで身につけてから、自分は政治の世界に行きたいなという順番の方が正しいなと思い、選んだのが「起業」という選択肢でしたね。段林: で、その中でまさに体重が乗っている運送業界・物流業界で、という話なんですが……そちらは、その2でお話しいただければと思います!▼前回のエピソードはコチラ👇https://www.rokko-jitsugyo.co.jp/news/sVzZ8duX▼六興ラジオ【社会インフラの横丁から】シリーズはコチラ👇https://www.rokko-jitsugyo.co.jp/news/category/rokko-radio