始まりました。社会インフラの横丁から。この番組は、社会の当たり前を支えてくれている人たちの声を、人情味あふれる六興村の隅っこにあるこの横丁からお届けするラジオです。本日も温かいお話や苦労したお話、心に染み渡るお話、そしてこれからの未来につながるお話をお届けしてまいります。今回のゲストは、前回に引き続き、有限会社MIYABIの辻雅弘社長です。「運」をテーマにした前回から一歩踏み込み、今回は辻社長の経営哲学の根幹である「人」に焦点を当てます。当たり前のことを徹底する「ABC」の精神や、社員、そしてその家族への感謝が溢れるエピソードは必読です。%3Ciframe%20data-testid%3D%22embed-iframe%22%20style%3D%22border-radius%3A12px%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fopen.spotify.com%2Fembed%2Fepisode%2F59y9xFtjE7w1xoNiyJ0PAI%3Futm_source%3Dgenerator%22%20width%3D%22100%25%22%20height%3D%22352%22%20frameBorder%3D%220%22%20allowfullscreen%3D%22%22%20allow%3D%22autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20fullscreen%3B%20picture-in-picture%22%20loading%3D%22lazy%22%3E%3C%2Fiframe%3E人を大切にする経営は「当たり前」をやり抜くこと段林: 今回も、有限会社MIYABIの辻社長にお越しいただいております。 前回は「運」というお話から、日頃の行いの積み重ね、いい行いをしっかりやる、といったことが社員さんにも伝播して、御社にすごくいい気が流れているなと感じたという着地でした。 おそらく辻社長の中で、その「人」の部分というのは、かなりこだわって会社作りをされてきたのかなと思うのですが、最初から意識されていたわけではないのかもしれません。 「あ、会社ってこうだな」と思うようになったきっかけや、思いなどはあったりされるんでしょうか?辻社長: 「人」って、そもそも大切じゃないですか。人を大切にする経営というのは、当たり前のことなんですよね。でも、その当たり前のことができていないのが、かつての我が社も含めて結構多かったりするんだと思うんです。私自身ももちろんそうでしたから、そこはちゃんと向き合わなきゃいけないなと思っています。段林: なるほど。辻社長: 「人を大切にする会社」は、企業として残していかなければならない。これは当たり前のことなので、それを解いた偉い先生がいらっしゃるんですよ。坂本光司先生(※『日本でいちばん大切にしたい会社』シリーズの著者として知られる経営学者)という方なんですが、今でも教えを乞いに行ったり、講演を聞きに行かせてもらったりしています。 先生がおっしゃっているのは、ごくごく当たり前のことなんですよ。でも、最初に聞いた時は「なんて難しいことなんだ」と思いました。まともに1から10まで全部やっていたら、会社が潰れちゃうよ、やっていけないよ、と思うくらい当たり前のことなのに、それができていないんです。我が社も含めて、世の中の多くの会社がそうだと思います。できていないからこそ、坂本先生は「そうじゃないんだよ」と説いてくれている。 それを一つずつ向き合おうとすると、剥ける(殻を破れる)んです。 軸にあるのは、人に対して必ず愛情を持っていくこと。愛情を持っていくと、人を大切にすることであったり、いろんなことをそうしていかなければいけないよ、ということになっていくのだと思います。★コラム 経営の常識を覆した『日本でいちばん大切にしたい会社』の教え記事内で辻社長が「教えを乞いに行っている」と言及した坂本光司先生。彼が提唱し、ベストセラーとなった書籍『日本でいちばん大切にしたい会社』は、従来の資本主義的な経営論とは一線を画す哲学を持っています。通常、企業経営では「株主」や「顧客」が最優先されがちです。しかし、坂本氏は「会社が大切にすべき5人の人」という優先順位を明確に定義しています。その順位とは、1に「社員とその家族」、2に「社外社員(仕入先・協力会社)」、3に「現在顧客と未来顧客」、4に「地域住民」、そして最後に「株主」です。 「社員が幸せでなければ、顧客を幸せにすることなどできない」というこの逆説的とも言える論理は、多くの経営者に衝撃を与えました。「ABC」と「明るい挨拶」辻社長: この「当たり前のこと」というのが、いつしか我が社の中でも……これは私が言った言葉ではなくて、素晴らしい言葉があるんですが、月に一度、ドライバー全員を集めた安全会議をやっているんですね。この中で、うちの本部長が必ずみんなに言う言葉があるんです。「ABC」って書いてあるんですよ。段林: ABC、ですか。辻社長: 最初、私も「ABCってなんだろうな」と思ったんですが、「当たり前のことを、バカにしないで、ちゃんとやる」という意味なんですって。段林: おお、めちゃくちゃいいですね!辻社長: A・B・Cと書いてあって、「当たり前のことをバカにしないでちゃんとやる」。 今のうちの社員は、安全会議で「はい、誰々さんこれ何ですか?」と当てられたら、「当たり前のことをバカにしないでちゃんとやる」と答えます。 それが終わると、次の画面にパッと切り替わって、「明るい挨拶をしよう」と出るんです。段林: 明るい挨拶、いいですね。辻社長: 人間の基本ってこれですよ。「当たり前のことをバカにしないでちゃんとやりましょう。そして、明るい挨拶をするのが、人としての一日の始まりなんだから、これは当たり前ですよね」と。 よく見てください、と言って、その文字の右上のほうと左下の方に「ひまわり」の絵が出てくるんです。段林: ひまわりですか。辻社長: 「このひまわり、いい絵だね。これどこから貼り付けたんですか?」と本部長に聞いたら、「違いますよ。うちでひまわりを育てて、咲いたやつを写真に撮って載せたんです」と言うんです。「これ、社長、何かに似てません?」と言われて、「なんとなくだけど、うちのマークに似てるね」と答えたら、「そうなんですよ」と。 「じゃあ、ひまわりに変えちゃうか、うちのマーク」と言ったら、「いやいや、そこは変えなくていいんですけど」なんて会話もありまして(笑)。段林: あはは(笑)。辻社長: でも、これが当たり前のことじゃないですか、と。 人と関わるのに、大の大人がですよ? 「当たり前のことをバカにしないでちゃんとやろう」「明るい挨拶をしよう」って、毎月唱えているんです。 角度を変えて見たらおかしいですよ。それは小学生の子供に、幼稚園の子供に教えることですから。 でも、それが大人ができていない。だから、そういうところから我が社は学んでいるんです。涙の安全会議「最後の授業」段林: 毎月それを唱和されているのはすごいですね。辻社長: その安全会議も、最後の方の時間は本当にわずかなところなんですが、本部長が会議の内容や安全についての話をした後に、「人材工房」というコーナーを持っているんです。 人は財産ですよ、その工房です、ということで話をします。つい昨日ですか、第一金曜日に毎月やっているんですが、学校の先生が子供たちに対して行う「最後の授業」というテーマで、本部長が話をしてくれたんです。 それを朗読してくれるんですが、毎月その話を聞くと、ちょっと涙が出るような話なんですよ。段林: どんなお話だったんですか?辻社長: 卒業シーズンの話です。 「先生、お世話になりました、ありがとうございました」と生徒たちは言います。でも、その先生は「そうじゃない」と言うんです。 「全員、視聴覚室に来い。俺の最後の授業をする」と言って、お父さんお母さん、保護者の人を生徒の席に座らせるんですって。そして生徒は、床に正座して座る。隣にお父さんが座っている状態です。 そこで「全員目をつぶってください」と言って、最後の授業を始めるんです。段林: はい。辻社長: 「本来、今日この日を迎えられたのは、今日で学校が終わる、卒業して世の中に出ていく。そうなった時に、君たちは『先生お世話になりました』『恩師にお世話になりました』と言うけれど、それは違う」と。 「よく見てみろ、よく考えてみろ、思い浮かべてみろ」と先生は続けます。 「今まで毎日お弁当を作ってくれたのは誰だ。お母さんでありお父さんだろう。そして学費を出してくれたのは誰だ。嫌なことがあったり、お父さんお母さんと親子喧嘩して口も聞かずにいた時も、見放さずに今まで育ててくれて、今日を迎えることができたのは誰のおかげだ。途中で部活をやって怪我をした人もいる、交通事故を起こした人もいる、そういうのがあっても、ずっと支えてくれたのは誰だ」段林: ……。辻社長: 「そうしたら、まず誰に感謝の言葉を述べるのが、人として大切なことだと思うか。学校の勉強なんかできてもできなくても、そんなのどっちでもいい。先生の俺が言うのはおかしいけど、親に感謝ができる人間になってもらいたい。一番感謝をしなきゃならないのは、先生でも恩師でも誰でもない。お父さんとお母さんだ」そう言って、「目をつぶったまま、お父さんとお母さんの親の手を握ってみろ」と言うんです。もうこの辺から涙うるうるなんですよ段林: すごいな……。辻社長: 「握って、感謝の気持ちを伝えろ」と。 そうしたら、その話を聞きながらも、いろんなところで泣き声が聞こえるんですって。先生は「いいか、これだけは忘れないでほしい。親に感謝の気持ちを忘れたら絶対だめだぞ。そして、そういう大人になってくれ」と伝えます。 そして最後に、「本当にお前たちが心から、親に『ありがとう』と思う気持ちがあるならば、その手を強く、ぎゅっと握り返せ」と言うんです。 そう言った瞬間、会場が大号泣ですって。 「これで、最後の私の授業を終わりにする」と言って、先生は去っていくんです。段林: うわぁ……。辻社長: こういう話を、安全会議の中で本部長がするんですよ。 人の仕事とは関係ないじゃないですか。人の心に入るような、感情に入り込むような話を、毎月何か考えて話をしてくれているんです。私が初めて聞く話もありますし、「これ、私が初めて聞いたことじゃないですよ」と言いながらも、周りの従業員も、協力してくれる会社さんも、お付き合いしてくれる会社さんも含めて、いろんな人がそこに集まってくれて、いろんな考えを教えてくれて成り立っているんです。 ですから、「人を大切にする」というのは、その結果として人が集まってきたり、人を大切にする気持ちが形になって表れたのが、そういうことなんじゃないかなと思いますね。覚悟の交渉と、予期せぬ「感謝」辻社長: 「嘘ついちゃった」「運賃上げてもらった」なんていうのは簡単で難しいじゃないですか。 我が社も苦労して、本当に大変な思いをして、「上げていただけないどころか、下げてくれ」と言われたお客様に対して、約3年半ぐらい前から交渉をしてきたんです。 みんなで話し合って、「もうそういうお客さんはどうする? 断ろう。じゃないと会社やっていけない、従業員が辛い思いをする。従業員が辛い思いをするんだったら、お断りしよう」と決めました。 見事に仕事減りましたよ。3分の1ぐらいお客さんいなくなりましたから。 「これ大丈夫かな」と思いましたけど、「いや、もう決めたんだから突っ走るしかない」と思って、みんなで取り組んだんです。逆に結束が深まりましたけどね。段林: なるほど、まさに苦渋の決断。辻社長: その中で、本当に今まで聞いてくれるのか聞いてくれないのか、のらりくらりとしてきたお客さんがいたんです。誰でも知っているような有名な、ブランドのあるお客さんですよ。 「本当に困ったな。でも、これじゃ飯は食えないし」というところで、「今回、もうこれ以上待つことはできないから、ダメだったらどうする? 俺、決断したい」とみんなに話をしたら、「しましょう」と。 「ここで力を使うより、違うことに力を使いましょう」ということで、「今回が最後の交渉として、話に臨もう」と言って話をしてたら、世の中の流れも変わってきて、たまたまうちのタイミングもそうなって。 先日、来ていただいて話をしたんです。 私どもが想定していた運賃、「こういう運賃だったらもうやめよう」というラインを決めていました。 「ここのライン以上だったら、これからも交渉させていただきながら継続していこう」というラインを明確に決めていたんです。段林: はい。辻社長: そうしたら、はるかにそのラインを超えて提示していただいて。もちろん私どもの希望、要望も出しましたけども。 そして、「MIYABIさんの従業員の方、ドライバーの方が、日々本当に一生懸命携わってくれて、本当に助かってます。これからもMIYABIさんのその従業員のドライバーの方の力を借りたい、貸していただきたい。だから、継続してお付き合いをしていただきたい」という言葉が、本当に心から言っていただいたような声のトーンと雰囲気と、言葉に心が乗ってきたように伝わってきたんですよ。段林: なかなか、そういったことはないですよね。「みんなの勝利」を分かち合う辻社長: それで運賃もポーンと上がったので、昨日の会議の時にみんなに伝えたんです。「苦戦してたんだけど、これこれこういうわけで、皆さんにはいつも厳しいことを言うけど、今日はもうお礼を言わせてもらいたい」と。 「みんながやってくれてきた結果が、答えとして数字に表れてきた。ありがとう。この勝利は私の勝利じゃない。みんなが1年間過ごしてきた、毎日のことだよ。毎日のことをみんなが1年間コツコツと積み上げたものが、私が代わりにみんなの代わりに交渉したけれども、こういう結果として表れた。これは皆さんで掴み取った勝利だと思う。本当にありがとう」と。 そして、「また3月で終わって4月から来期が始まるけども、来年もう一度、またこういう話ができるようにしたいと思ってるし、そのお客様とも『来年この時期にもう一回、運賃の話をちゃんとさせてください』という話をして『分かりました』と。ちゃんと来年もベースアップを考えてますという言葉もいただいてるから、また1年間、皆さん力を貸してくれ」という話をしたんですよ。段林: いやあ、すごいな……。辻社長: これが人を大切にする、そして会社を大切にしてもらえる、というところの「人」なんじゃないですかね。 これが我が社にとっては、差別化になっていくものだと、私は思うんですよ。 我が社の従業員の中で、先ほどのブランドの話じゃないですけども、「MIYABIのブランドを底上げしなきゃいけないですよね、MIYABIという会社をブランド化しなきゃいけない」って、このブランド化できなかったら残っていけないですよねって私に言ってきた社員がいるんです。 まさしくその通りだなと思ったのと、「ああ、そういうふうなことが会社の中から言葉として出てくるって、こんな素敵なことはないな」って、ちょっと感激したんですけどね。段林: いや、本当に自分たちの価値観というか、ちゃんとやるっていうことが、日々のドライバーさんの現場の積み重ねとか、いろんなやり取りの中での積み重ねが、最後勝ちになって、分かっていただけて。 よくある運送会社さんって、こう、話していると「相手が悪い」というところからスタートすることってあると思うんです。 でも今、辻社長のお話の中で、そういった表現って出てこなくて。自分たちが変われるところが相手に伝わって、行って(交渉して)いただけたっていう、その表現というか、そういった考え方の機微が僕はすごくいいなというか、すごく勉強になるなと思って伺わせていただきました。辻社長: いえいえ。段林: 本当に……自分たちのこの価値観というか、ちゃんとやるっていうこと。 それが日々のドライバーさんの現場での積み重ねや、いろんなやり取りの中での積み重ねになって、最後は価値となって相手に伝わる。 僕にとっても、非常に印象的で、勉強になるお話でした。 本日は本当にありがとうございました。▼前回のエピソードはコチラ👇https://www.rokko-jitsugyo.co.jp/news/vQCwfCqQ▼六興ラジオ【社会インフラの横丁から】シリーズはコチラ👇https://www.rokko-jitsugyo.co.jp/news/category/rokko-radio